目蕩み眠る 仏門をくぐる者もほとんどいない尸魂界では肉食禁止令が出されることもなく──そもそも食事を必要とする『死神』の方が少ない──豚の登場こそ遅れたが養鶏は円心からやや離れても比較的盛んに行われていて、飢えを覚えぬ常人とて衣類や住居を求め若きに卵を産ませ老いたものは捌いて廷内や流魂街の詰所に納めている。
「ウチはやっていなかったがな。皆んなは二日に一度くらい食べれば満足していたが、それでも食い詰めて鶏を飼うどころじゃなかった。飼料になるものはだいたい食べちまっていて。たまに貰ったり逃げてきたのを捕まえたりしても、窶れているから、卵を産めるのも二、三回きりだ、すぐに潰して食べてしまう。旨いのがまたいけない。それにあれは朝に鳴くだろう、起きるのが早くなってしまうから腹の減りも早くなる。結局は家畜、押し込められる小屋がしっかり分けてある家のものだよ」
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