痕を残して「よう、薄情じゃねえのカーミラ嬢」
咄嗟に電話を切ろうとした井浦だが後が面倒だと舌打ちで済ませた。どこの誰から情報が漏れたのか、考えたくもなかった。どうせ決まってる。分析していたデータを次々と保存していきながら据え置いたスマートフォンに吐き捨てる。
「変態に教える話じゃないからな」
作業用の背景音楽を止める。生憎この男──冴木の相手は片手間ではできなかった。そうやって生じた静けささえ冴木にとっては面白いようで無線イヤホン越しにくつくつと笑う音が聞こえた。どのような体勢で笑っているのか井浦にはさまざまと思い起こせてまた舌打ちしそうになる。
「正人の自慢話に付き合ってやってるんだぞ、こっちは」
「お前が聞き出してるの間違いだろ。ストーカーで神畑に言いつけてやろうか」
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