こうして新たな扉は開かれた「ホタルイカせんぱーい!」
十一月五日、火曜日。
授業がすべて終わった、放課後のひと時。
名門魔法士養成学校のガラス張りの植物園をぐるりと取り囲む、緑で満ちた空間の最奥。人気のない野外で膝を抱えるイデアのもとに、明るい声が届いた。
タブレットを見つめていた琥珀色の瞳が、声の方を振り返る。視界の先。生い茂る木々の合間から、着崩した制服ズボンに両手を突っ込んだ長身がひょこりと姿を現した。
にこーっと効果音が聞こえてきそうな笑顔で、待ち人が足取り軽く近づいてくる。だが、近くで足を止めたウツボを見上げる勤勉寮の寮長は、対照的なまでに無表情だった。
「なーに、先輩。どうしたの、そんな顔して」
「どうしたの、はこっちの台詞だけど。そんな格好で何やってるのさ、ジェイド氏」
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