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    @IzumiKzs

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    ツイッターでしているネタ整理のひとつ。フロイデ。
    ↓の続きの別シーン。何でも許せる人向け。
    https://poipiku.com/2666056/5752478.html

    ※後天性女体化のにょたゆり
    ※💀が百合好き
    ※ネタ整理なので唐突に始まり終わる
    ※すごく頭が悪い

    ※※モブイグニ寮生が出張る※※

    (2021.12.11)

    「魔法薬事故で(以下略)②『イデア氏イデア氏! 朗報ですぞ!!』

     モストロに出勤するフロイドと護衛役のオルトを見送って、念の為しっかりと鍵を閉めた後。今日中にソシャゲのイベストを全開放させようと、ポイント集めの周回を始めたイデアのタブレットにぴこんとメッセージアプリの通知が表示された。互いに百合愛好家として一目置いている同級のイグニハイド寮生――通称リル太からのメッセージだと知ったイデアは、周回の切れ目にアプリを立ち上げる。そこには、確かに朗報と言うに相応しい文字列が踊っていた。

    『ゆりまーる氏が年末のコミマにサークル参加するようですぞ!』
    『マ? ついに心の傷が癒えたんで?』
    『そのようですな。さっきマジカメに申し込み表明していました故、速攻でメッセ送ってコンファームしたでござる』
    『うおおお、ゆりまーる氏の新作がついに読めるんですなぁ! あ、でもジャンルはどうなるんで? 流石にもう前のジャンルってことはないよね?』
    『とーぜん別ジャンル……というか、オリジナルで取るみたいですぞ』

     慣れた指さばきでやりとりを続けながら、イデアはパソコンのディスプレイにマジカメのタイムラインを表示させる。フォローが多すぎて雑然とした情報の群れをスクロールしながら、手早くお目当てのアイコンを見つけ出した。デフォルメされた女の子キャラのアイコンが目印のゆりまーるは、イデアとリル太が愛してやまない、イグニハイド寮所属の百合小説家である。もちろんアマチュアであり、主な活動の場はマジカメにマジピクという作品投稿サイト、そして同人誌即売会だ。版権ジャンルの二次創作で活動する氏の紡ぐ、十代後半の少女たちによる恋愛模様は狂おしい程に切なくて美しい。その作風は多くの読者に愛されており、コミマ(同人誌即売会コミックマートの略称)でもちょっとした行列が出来る人気作家だ。
     だが、悲劇は唐突に訪れた。あれは忘れもしない今年の初め。彼が百合カップルとして扱っていた少女の片方が、本誌連載で突然男とカップル成立しまったのだ。あの時マジカメに溢れたジャンル者たちの悲痛な叫びは、今思い出しても胸が痛くなる。ちなみにゆりまーる氏はバルガスに部屋から引きずり出されるまで一週間学校を休んだし、その間に体重も五キロほど減っていた。
     以降、心に消えない傷を負った氏が新たなジャンルにハマることはなく、マジピクもマジカメも完全に沈黙してしまい。同じ寮なので顔を合わせることはあるものの、まだしばらく活動は出来そうにない、と。つい先週会った時も溜め息混じりにそう言っていたはずなのに。
     現在空中ディスプレイに映し出されている彼のアカウントのタイムラインには確かに、『年末のコミマ申し込みました! ジャンルはオリジナルです! もちろん百合ですよ~!』と嬉しそうに書かれていた。
     呟いてからまだ一時間弱だというのに、多くのリプやいいねがついていることから、彼のファンの喜びが伝わってくる。イデアもそこまで熱心な原作ファンではないものの、公式での突然の男女カップル成立には衝撃を受けたし、その後のゆりまーる氏や嗜好を同じくする寮生の姿には随分と心を痛めたものだ。だから、純粋に良かったですなあ、と言いたい気持ちはある。本当にとってもあるのだが。
     同時に、なんだかとてつもなく嫌な予感がするものだから、氏の呟きについたリプを辿る手を止めることが出来ない。
     そうして目を止めたひとつのリプライ。『復活をお待ちしておりました!』という喜びの声に続く、『ゆりまーるさんのオリジナル百合カップルちゃん、とっても楽しみです! 一体どんな娘たちなのか今からワクワクしています!』というコメントに氏自らが返したリプライには、こう書かれていた。『ありがとうございます! カレッジに通うオタクな天才魔法士と、その後輩のギャル人魚ちゃんのお話になる予定です!』と。

    「………」

     イデアは無言のまま、リル太との通話開始ボタンをタップする。『イデア氏、どうしたでござるか~?』と。ワンコールの後、軽い調子で通話に出た同志にイデアは単刀直入に言葉をぶつけた。

    「今、マジカメでゆりまーる氏の新作についてのリプ見たんだけど。これ、拙者とフロイド氏のことだよね?」
    『…………流石は我らがイグニハイド寮長! お気づきになられましたか!』
    「お気づきにならない要素が一体どこにあるっていうのさ!」

     オタクな天才(自分で言うのはどうかと思うが、そんな二つ名がついているのは事実である)と後輩のギャル人魚。どっからどう見てもイデアとフロイドのことである。二人が魔法薬によって体のみ女性化しフロイドがイデアの部屋に逗留するようになってから、二人の複雑な関係性が広まってしまったイグニハイド寮生に聞けば、十人に十人がそう答えるのは間違いない。

    『いやでも仕方がないと思いますぞ。むさい男子校に突如現れたリアル百合カップルの波動。イデア氏とは二年来の付き合いである拙者も多少グラッと来るものがありました故。それに、二人のお陰でゆりまーる氏の創作魂に再び火が点いたというのなら、氏のファンである拙者たちは素直に喜ぶべきではござらんか?』
    「そりゃ君はそれでいいだろうけど、拙者はバリバリの当事者ゆえにヤッター!とはならんのですが? 折角の推し百合作家の新作のモデルが自分(生物学上れっきとした男)って、萌えられるハズないしフツーに悪夢でしょ! それに確かに現状は致し方なく百合っぽい感じになってるけど、元は両方とも男だからね? 百合っていうよりBLだからね???」
    『たとえ元はBLといえど、一度女体化したからには立派な百合。百合に貴賤は存在しない。そんな大切なことを拙者は今回の騒動から学びましたぞ』
    「ちょっとなに言ってるのかな??」

     それからどれぐらいの時間が経ったのか。
     「新刊の内容を変えさせる」『いやそれは検閲に類する行為であり表現の自由を侵害するものですぞ』「こっちのプライバシーとか肖像権はどうなるんだよ!」『その辺りは流石にフェイク入るっしょ』「さっきのリプのどこにフェイク入ってた!?」『後輩ちゃんはイカの人魚になるようですぞ』「そっちがイカになるんかい!」等々。白熱する音声通話に夢中になってしまい、時間が経つのを忘れていたイデアの耳に、部屋のロックを解除する特徴的な電子音が飛び込んできた。

    「ただいま、兄さん!」
    「なーにギャーギャーわめいてんの~?」

     扉が開く音と共に二人の帰りを知ったイデアは、咄嗟に通話を終了する。即座に『今日はこれまで!』とリル太に向けて打ち込んだ後、メッセージアプリもマジカメも閉じて背後を振り返った。

    「ふ、ふたりともおかえり。えっと、今のはちょっとネトゲで白熱しちゃって。でももう終わったから」
    「ふーん、別に続けても良かったのに。まーでもそういうことなら一緒に夜食たべよー? 今日は結構余ったから、いろいろ持って帰ってきたんだよね~」
    「せっかくだしそうしなよ、兄さん! いつもお菓子ばっかりじゃ体に悪いからね!」
    「う、うん、わかった」

     なんとか上手く誤魔化せたことにホッとしつつ、イデアは食事を乗せる為にボドゲ用のローテーブルを引っ張り出してくる。
     イデアがあんなにも慌てたのは、自分たちをモデルにした百合小説が爆誕する可能性があるという事実をフロイドに知られてはいけないという、強い危機感を覚えたからだった。それは別に、その事実を知ったフロイドが怒ると思ったからではない。イデアが危惧しているのは、むしろその逆だ。
     肉体だけとはいえ女性同士という特殊な状況だからか、現在の二人の関係性を自分が好きなタイプの百合だと認識してしまったからか。いつもよりフロイドへのガードが緩くなっている自覚がイデアにあるように、フロイドもまたその事実に気付いているのは明白だ。そして、先日の「メス同士でキセージジツっての作ったら、元に戻ってもオレたち番のまま?」という言葉からも分かる通り、フロイドはこの状況を利用する気満々なのだ。
     そんな彼が、自分たちをモデルにしたキャラが恋愛する作品が生まれると知ったら。恐らくは面白がると思うし、なんなら協力するとか言い出しかねない。そんなことになったら、今でさえ毎日の接触過多に限界ギリギリなイデアの心臓は悲鳴を上げてしまうだろう。そして、そうなったが最後どういう結末が訪れるのか。なんとなく答えが出そうな問いを深く考えないようにするのに、今のイデアは必死なのだ。
     故に、この事実がフロイドに知られる前にゆりまーる氏の新作内容は変更されなければならないのだと。固く拳を握りしめたイデアの決意はけれども。残念ながら、その翌日には粉々に打ち砕かれるのだった。
     


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