眩しい。光か、日の光を浴びるのはいつぶりなのだろうか。最後の見たのは妹が生きていたときだろうか。俺は唯一の家族であった妹を失いあの鬼の男に復讐を誓って生きてきた。何十年もあの男を殺すことだけを考えていた。そして最後に何が残ったのだろうか。いや、何も残らなかった、気づいた時には遅かった。全てを失い、唯一の友も自らを殺めてしまった。
「───」
「────」
誰かの声が聞こえる。聞いたことのない声だ。俺を助けようとしているのだろうか。だとしたら何故助けるのだろうか。もう生きる理由もないというのに。身体に何かを着せ抱えられたような気がする。そのまま何かに連れ込まれ意識を失った。
目が覚めると湯の中にいた。
「っはぁ!!」
いきなりのことで驚き飛び起きてしまう。周りを見渡すと見覚えのない景色が広がっていた。どこかの部屋のようで目の前に手に何かを持っていた男がいた。
「・・・眠っているうちに洗おうと思ってたんだけど」
「いやそれならすまない」
「いや~うちの子がね社の封印解いちゃって」
社?あの時お互いに道連れで封印して
「まさか・・・!?」
「安心して、『中身』は取り除いたから。相当長く封印されていたから力も大分弱まっていたと思うけど、さあキレイキレイしましょうね~」
有無を言わさず身体中を泡だらけにされてしまう。気持ちいいがなんとも恥ずかしいな。そして洗い流されると布で身体の水分を拭き取られる。そして服を着せられる。
「ほらばんざいして」
見たことない服だが着てみると動きやすいな。少し大きめなのは仕方がないとして。
「助かった。お前は命の恩人だ」
「どういたしまして。そういえば自己紹介がまだだったね。僕は暁人」
「俺は・・・」
ずっと封印され続けていたせいか名前を忘れてしまっていた。
「名前、忘れたの?」
「ああ、長い年月の間に色々あってな」
「じゃあ暁って名前で呼んでもいいかな?」
「ああ構わないぞ」
「僕も呼び捨てでいいよ、ついでに家族に紹介しようか」
家族という言葉に懐かしみを覚える。この男は俺の家族になるのか?廊下を歩き部屋に入るとそこには暁人より年上の男と子供が一人いた。
「やっぱりお前は」
「べつにいいだろ、ペットが増えたと思えば」
「妖怪ホイホイめが」
何か男と言い合っている様子でいる、すると子供が立ち上がり俺の足元に近づいていく。
「麻人って言うんだ」
「この子の母親は?」
「え?僕だけど」
「・・・はぁ?」
待って暁人が母親?一体どう言うことだ理解が追い付かない。
「じゃあその男は」
「旦那」
「んんんん???」
ますます混乱してしまう。
「だから僕の夫だよ」
「・・・」
頭が痛くなってきた。
「まあそんなことは置いといて、暁って名前で」
「呼びにくいなそれ」
「アキで」
「採用」
こうして俺は新しい名前を貰うことになった。これからここで暮らすことになるのだろう。何ができるかわわからないが精一杯やっていこう。あれから数日が経った。
「ほらくえ」
今俺は狐の姿で麻人が餌皿に白米の残りに味噌汁をかけたものを差し出してきた。飯がないよりはましだと思い食べることにした。