トロイメライアンコール昔、砂漠で男を助けたことがある。
まだ自分も幼かった事もあり、あまり多くを覚えていないが倒れていた男に食事と水を分けた。最初は宝盗団やエルマイト旅団の一員かもしれないと冷や汗をかいたが、そんな僕を気遣ってか助けてくれたお礼と渡されたものがある。
「はいこれ、いい子の証だ。」
大きな手から渡されたそれは、金色のシンプルなピンキーリングであり、装飾品を人から貰った事の無い僕は手放しで喜んだ記憶がある。
どの指もサイズが合わず困っている僕のために、どこからか革で出来た紐を取りだして勲章のように首にかけてくれたことも鮮明に思い出せる。
その日の夜は、あのころの僕にとって短い夜だった。
会話も酷く弾んで、今思えば彼もどこかで学者として名を馳せた人だったのかもしれない。
14019