あれから少し経ったが、二人の共同研究は穏やかに続いていた。それに伴ってカーヴェは無理にスケジュールを埋める事を辞め、ストレスによる過度な飲酒も控えるようになった。
アルハイゼンはそんなカーヴェの様子を見て、もっと早くから素直になっておけばよかったと多少後悔したが、再会してすぐの頃の自分達では届かない結果だったなと思い返せば短い様な長い年月を思い浮かべた。
締切もなく、永遠に紡ぐような二人の共同研究はもう既に分厚い帳面を数冊使い果たすほどに順調だった。
ただ、アルハイゼンには不満があった。順調な共同研究とは違い、全く変わらない二人の関係についてだった。
しかし、それはアルハイゼンの問題であって二人の問題では無い。それに気がついたのはカーヴェからの言葉でも、アルハイゼンの優秀な脳みそがたたき出したのでもなく、偶然にも酒場で一人グラスを傾けていたセノであった。
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