チープ・スリル(仮題)- 9「で、なんで夜なの?」
夕焼けが影を落とす公園のベンチに座って、暁人はKKに問いかけた。座敷わらしの現在の住まいに程近く、空き地にわずかな樹木が植わるだけの小さな公園だ。青紫とオレンジのグラデーションが賑やかな空とは異なり、地上には枯葉と土のくすんだ茶だけがある。住宅街の隙間を縫った猫の額ほどの空間では、遊ぶ子供もいないようだった。暁人以外の人影はない。
「鬼のことを思い出せよ。勾玉を持ってる、か弱い妖怪が大移動しようってんだ」
「マレビトが襲ってくるってこと?」
「そういうことだ。真っ昼間に大立ち回りは難しいだろ」
なるほどと、とひとつ頷くと、風がぴゅうっと吹き込んだ。枯れ葉が一枚、風に乗って飛んでいく。暁人はひょいと首をすくめた。
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