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    めてぃ

    結界師正良の妄想をほぼ壁打ちでただ垂れ流すだけのアカウント。
    あとは自作正良ぬいで色々と写真取ってます。
    メモとあるのはほぼ小説かほんとにメモだけです。
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    めてぃ

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    1129 言いにくいことをいう日 の正良。

    久しぶりの帰省。
    茶の間でお茶をすすりながら庭を眺めていると、玄関から眠そうな声で「ただいま」が聞こえてきた。
    相変わらずのトーンに苦笑いしつつも、癖ともなってしまっている弟へのちょっかいを出したく仕方なくなる。
    どうするかと耳を澄ませていると、部屋に荷物を置いた後洗面所で手を洗ってそのままこちらに向かってくるようだ。
    警戒していれば、うっかり茶の間になんてこないに違いない。そのくらいはいつもの態度を見ていればわかる。
    眠くて頭が働いていないのか、兄が帰ってきてることなんてちっとも覚えていないのだろう。ちょうどこたつも出ているし、おやつを食べてそのまま昼寝をするつもりに違いない。
    「おかえり」
    茶の間に入ってきたところで声をかけると、案の定飛び上がるほどびっくりして後ずさる。
    「た、だいま」
    驚きつつもしっかり返答するのは条件反射なのか、律儀すぎて笑えてくる。
    「まあ、そこに座れ。兄ちゃんがお茶をいれてやろう」
    「また説教かよ」
    そう言いながらも素直に座るのはなぜか。そしてなぜ毎度説教だと思うのか。楽しく談笑してやろうと思っているのに。
    「説教されたいの?」
    「そんなマゾに見える?」
    「うん」
    「あっそ」
    この会話が楽しい。昔は、突っかかってそれでも口で勝てなくて結局泣いていたというのにふてぶてしくなったものだ。さらには、文句を言いつつも人の入れたお茶をすすりこたつにすっぽりと入っている。
    「お前もすっかり大きくなったなぁ」
    感慨深げにつぶやく。
    「親戚のジジイかっての」
    すっかりコタツで溶けかけていたが、こちらの呟きは聞こえていたようで、天板に頭を預けて眠そうに答えた。
    なんだかんだ言いつつこちらの相手をしてくれている。そうなると、昼寝を邪魔したいわけではないがつい揶揄いたくなってしまうのが性だ。
    「なあ、今日何の日か知ってる?」
    「え~」
    眉間にしわを寄せて、今それを聞くのかというのがありありとわかる表情で不満の声をあげる。それでも、今日が何日だったのかを思い出して答える。
    「いいにくの日。なに?兄貴、焼き肉とか食わせてくれようとしてるの?」
    急に眠気をさまして食いついてくる。
    「はずれ。いい肉はそのうちな」
    「え!?冗談で言ったのにほんとにほんと??」
    「そのうちだからな~いつかはわからん」
    あまりの食いつきっぷりに苦笑いするしかない。これが成長期の食い気というものか。
    「なんだよ。期待させるなよ」
    興味がなくなったのか、こたつにもたれてまた寝る体勢に入る。
    「なあ、今日は何の日か知らないのか?」
    「眠いんだからもういいだろ?」
    ふわっと大きなあくびをして目じりに涙を溜める。考えてはみるもののすでに頭が働かないのかそのまま固まってしまった。
    「今日は、言いにくいことをいう日だそうだ。だから、今日はお前の言いにくいことを聞いてやろうと思ってな」
    「頼んでねぇし…」
    めんどくさそうに言う。そりゃ、こんなことに付き合うよりも昼寝をしたほうが有意義に違いない。
    「そう言うなよ。思ってることあるだろ?それを聞いてやろうっていうんだからな」
    「なんで上から目線なんだよ」
    突っかかってくるのが面白い。好きの反対は無関心というから、反応が返ってくるだけそれほど嫌われていないということか。
    「久しぶりに帰って来たし、兄ちゃんに悩みでも相談してみたらいいじゃないか。色々悩んでることとかあるんだろ?ん?恋の悩みとか」
    言いにくいことを言う日から、恋の悩み相談にシフトしたが気づかないふりをする。弟が何に悩んでいるのか聞くだけでも面白くなる。
    「こ、こ、こ、恋…とか。そんなのねぇし」
    案の定、初心な反応だ。揶揄い甲斐があるというものだ。
    「今の動揺の仕方は、恋の悩みがあるって反応だと思うけどな。なに?時音ちゃんか?どれ、兄ちゃんに相談してみろ。少しはアドバイスできるかもしれんぞ?」
    「時音は関係ねぇし。兄貴に言えるか。バカ」
    今までの反応でいうとさらに照れるかとおもいきや、悪態をついて今度こそこたつの中に潜りこんでしまった。
    頭だけ出してすっぽりと埋まり、そのまま無視をきめて寝ようとしている。
    思っていた反応と違うことにますます興味が湧いてくる。しばらく会わなかっただけでこんなにも変わるものなのか。
    コタツを抜けでると、良守が寝ころんでいる側に回り背後からコタツに入って添い寝しながら肩肘をつく。昔はこうやって一緒に昼寝をしたものだ。
    「なぁ、良守~兄ちゃんに話してみろよ~」
    小さいころやったように布団の上からポンポンと叩きながら話しかけると、良守が慌てて振り向く。あまりの顔の近さに目を見開いて驚くが、ポッと顔が赤くなってすぐに顔を逸らしてしまった。バカにするなと怒られると思っていたのにまた反応が違う。なんなんだろうか。
    「なんだよ。人の気も知らないで」
    小さくつぶやくとできるだけ正守から距離をとって丸くなる。あまりに想像と違う行動に今度は正守がきょとんとした。その理由が知りたくて仕方ない。
    また距離を縮めると、少し離れる。また近づくと離れ、それでもコタツの足までたどり着いてしまったらそれ以上逃げることはできなくなる。
    「よしもり~、なあ、なあ、話しちゃえよ」
    「………」
    「良守くん~、なんで無視するのかな?」
    「……」
    黙っているのをいいことに、気を引こうといろいろと呼びかけてみる。
    「よしも…」
    あまりにしつこかったからか、何度目かの呼びかけで観念したのかこちらを振り返り、きっと睨む。
    「うるせぇな!!!お前が好きとか言えるわけないだろ!!」
    「え?」
    「あっ…」
    お互い違った意味で一瞬時間が止まった。
    「え?え?よしもり??今なんて言った?」
    「いや、あの…その…なんでもねぇから忘れろ!!」
    慌ててコタツから抜け出し部屋へ戻ると襖を思いっきり閉める音がした。
    残された正守は、ぽかんとしながら今言われた言葉を思い出す。
    「良守が俺の事を好き?ってこと。なんだそれ」
    思ってもみなかった展開に顔がにやけてくる。今までの態度はそういうことの裏返しだったわけだ。
    いつまでも小さい弟だと思っていたのがやはりいつの間にか大きくなっていたのだ。
    正守の中に閉じ込めていた気持ちを解き放つ時が来たのかもしれない。少しずつ良守に流し込んでいた気持ちがついに報われる時がきた。
    正守は、良守の気持ちを確かめるべく、ニヤニヤした顔をなんとか収めると、無駄な抵抗だとはわかりつつもおそらく結界を張って入れないようにしてあるだろう良守の部屋へ向かった。
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