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    合同誌の時に書いたけど長かったからやめたやつ晒す

    #ひめさね

    始まりは同居「記憶喪失?」
    「えぇ、おそらく血鬼術によるものだとは思うんですけど…」

    溜め息をつく胡蝶と悲鳴嶼の間にはきょときょととあどけない表情をした、普段は鬼よりも鬼だと恐れられる、最近柱となった風柱こと不死川が小さく首を傾げながら二人を眺めている。

    「そうか、偶然とは言え通りかかったのは幸運だったと言うことだな…」
    「そうですね、相対した鬼の首は斬れてても、この状態の不死川君じゃ他の鬼を殺せそうに無いですし…ねぇ?不死川君、自宅に帰れるかしら?」
    「自宅ってどこにあるんだぁ?」
    「駄目そうですねぇ…」

    ふぅと溜め息をつく胡蝶に、一度不死川の自宅に寄って荷物を持って悲鳴嶼の自宅で保護することになった。
    流石に記憶が戻った際に胡蝶や蝶屋敷の子供たちに日常生活すら儘ならない自分の世話をさせたと考えると今以上に彼が蝶屋敷に寄り付かなくなるだろうと言う悲鳴嶼の言葉に皆納得し、何故か残念そうに見送られてしまった。

    「えっと、ひめじまさん。どこいくんだぁ?」
    「お前の屋敷だ」
    「俺の屋敷ぃ?」

    こてんと首を傾げる姿に悲鳴嶼は少し頭を抱えつつ、フラフラと露店に行きたがる不死川の腕を引いて風屋敷に辿り着くと、中から爽籟を肩に乗せた隠の青年が慌てて姿を表す。

    「岩柱様、こちらが風柱様の数日分の荷物になります。お手数をお掛けしますが、よろしくお願い致します」
    「あぁ、準備してくれてありがとう」

    荷物を受け取りのんびりと爽籟の嘴をちょいちょいと触って遊んでいる不死川の笑い声に溜め息をつく。

    「不死川、止めてあげなさい」
    「何でぇ?嫌だったんかぁ?」

    爽籟の顔をのんびりと見返す彼に本日何度目かの溜め息。悲鳴嶼の肩に乗っていた絶佳が頬にすり寄ることで少し眉間の皺を和らげた。

    「悲鳴嶼さん、どこいくんだぁ?」
    「私の屋敷だ」
    「俺も行っても良いのかぁ?」

    悲鳴嶼の大きな歩幅に合わせるように小走りで隣に走り寄り、その大きな掌にひょいと先程までと同じ様に己の掌を絡ませてぎゅっと手を握って穏やかな空気で悲鳴嶼を見上げてへらりと笑う。

    「お前を連れ帰るから、こうして荷物を取りに来たんだろう?」
    「そっかぁ」

    にこぉっと楽しそうに不死川が笑うが悲鳴嶼は見えておらず、指を絡めた手を引いて自宅へと向かう。

    「悲鳴嶼さんあれなんだぁ」
    「私は目が見えぬ」
    「えっ!ごめん」
    「構わぬ」
    「俺が先に行こうかぁ?足元大丈夫かぁ?」
    「私には歩き慣れた道だ、案内も居る」

    悲鳴嶼の言葉に絶佳がくるりと上空で回って見せる。それを見上げた不死川は楽しそうにからからと笑った。
    自宅についてから、不死川は悲鳴嶼の後ろをついてまわったりして楽しそうに話しかけ、世話になるのだからと、隠に場所を聞いて家事を手伝っていた。

    *******************


    「あっ!悲鳴嶼さんお帰り」

    修行から戻ると、下駄の音をカラコロ鳴らして駆け寄って飛び付いてくる不死川に戸惑いながらもその重たい身体を抱き止めると、へへっと腕の中で不死川が笑う。

    「どうかしたのか?」
    「あんたが炊き込みご飯好きだって聞いたから作ったんだぁ、食ってみてくれよ」

    記憶を無くしてから、常にニコニコと楽しそうに笑い、極力誰かの傍に立ち、誰かの世話をやく不死川に悲鳴嶼は少し涙腺を緩ませた。
    鬼に関わらなければ、きっと周りに人が集まるような男だったのだろうと思うと涙が溢れて、不死川はそんな悲鳴嶼に慌てて袖で涙を優しく拭ってから、その大きな掌に指を絡ませてグイグイと腕を引く。

    「夜に仕事あるんだろ?早く食ってくれよ。美味しいって泣くなら良いけど今泣くなよぉ」
    「南無…」
    「ほらぁ、早く食ってくんねぇと、俺は部屋に籠らなきゃなんだろぉ?悲鳴嶼さんが夜仕事に出たら厠の隣の藤の香を焚いた部屋で朝日が出るまで居たら良いんだよな?」
    「あぁ、分かった。急ぐから手を引くのを止めてくれ、歩き辛い」

    悲鳴嶼の言葉にパッと手を離して、玄関へと向かって早くぅと催促する不死川の方へ歩を進める。

    まぁ、普段とは違い敵を作らない彼の姿にしばらくは自宅に居てくれても大丈夫だろうと少し安心して羽織を脱ぐとすぐに掌が差し出されて、不死川が受け取ってくれる。

    「そこまで、やらなくても良いからな?」
    「俺がしたいからやってんのぉ、大人しく色々させてくれぇ」

    まったくと溜め息をつくと、不死川が楽しそうにカラカラと笑うと、足元に猫達がわらわらと集まり、可愛らしい鳴き声がにゃあにゃあと上がり、ついつい頬が緩んでしまう。

    まぁ、猫も馴染んでいるし、あと数日間数週間のほんの少しの間くらい彼と一緒に過ごすのも悪くはないだろう。



    *******************



    「悲鳴嶼さんお帰り!風呂沸いてるから入ってきてなぁ、それまでにご飯準備しとくからぁ」

    正直。まずいと感じている。
    たった数日、されど数日。
    何故かと言うと、愛らしいのだ。毎日任務から帰ると嬉しそうに駆け寄って抱き付いてくる同僚が。
    仕事終わりに疲れた身体を癒す、美味しい朝食と、良い塩梅に沸かされた風呂。楽しそうな笑い声、何故見えないのかと歯痒く思ったことも何度もある。

    「どうしたぁ?悩み事かぁ」
    「不死川、特訓はしたか?」
    「ん?おぉ!言われてたやつだろぉ?したぁ。悲鳴嶼さんに言われたやつと滝行」

    だが、此処に居る不死川は本来の彼ではない、早くもとに戻る方が良いに決まっている。

    「悲鳴嶼さん、昨日カナエんとこ行ったら、あと長くても二三日で治るってぇ、ずっと迷惑かけててごめんなぁ」
    「そう、か…良かったな、不死川」

    大切な戦力が戻ると考えると良いことだ、ただ、私の元から彼が居なくなってしまうことが辛いがこれはあらわすべき感情ではない。

    そっと頭を撫でると、不死川は慣れたように少し顎を引いて頭を差し出してくる。

    「…」

    頭を撫でながらポソリと声が聞こえたが、声が小さすぎて少ししゃがんで顔を覗き込むが、残念ながら私には表情で確認することは出来ない。

    「不死川?」
    「ううん、何でもねぇ。お風呂入ってこいよぉ。ご飯は準備しとくからさぁ」

    再度声をかけるが、先程の小さな声とは違う普段通りの声に深く聞くことも出来ずに、不死川に背を押されて風呂へと誘導される。

    「ご飯暖めとくから、しっかり暖まるまで出てくんなよぉ」

    羽織を無理やり取り上げられて、脱衣所へ押し込められるが、先程の小さな声が気になってしまい、気もそぞろだったが、風呂に入れば、緊張していた筋肉から力が抜けて、口からふぅーっと小さく息が漏れる。

    本当に丁度良い…
    熱くなく、温くもなく、本当に私には丁度良い、厨から美味しそうな焦がし味噌の良い香りがする。
    ふんわりと香るその香りに私の腹からきゅるるるっと小さな音がする。

    あぁ、お腹がすいた
    ずっと此処にいて欲しい、笑って出迎えて欲しい。
    彼が不死川じゃなかったら、なんて思ってしまうこともある。
    彼にも不死川にも失礼なことを考えてしまったと湯をすくってパシャリと顔を洗う。

    それでも、彼の声を聞くたびに、私から離れてしまう不死川を想像して引き留めて、日光にあてず部屋に閉じ込めてずっと彼と居たいと思ってしまう。

    「悲鳴嶼さーん!魚、山女魚とイワナどっちが良い~?」
    「山女魚の煮付けがいい」
    「山女魚の煮付けな、分かったぁ」

    こう言うところだぞ!!
    食材だけ見て決めれば良いのにわざわざ風呂の前まで来て聞いてくるのだ、炭の匂いがしていたから炭火焼きを準備してたんじゃないのか?

    「あ~」

    此処にいて欲しいと彼に伝えたら、此処にこのまま居てくれるのだろうか?
    彼が柱じゃなかったら、私はきっと彼を此処に閉じ込めてしまっただろう。

    「いかんなぁ」

    ザバッと湯から上がると、厨からトタトタと足音が聞こえる。
    カラカラと脱衣所が開かれた

    「悲鳴嶼さん!手拭い置き忘れたから此処置いておくなぁ」
    「分かった、すぐ上がる。」
    「分かったぁ、ご飯いれとくからぁ」

    こんな、もう妻じゃないか…
    クスクスと笑う声がとても可愛いじゃないか。
    欲目なのは分かっている。
    恋は盲目。
    私は彼に惚れている。

    「悲鳴嶼さん、一緒にご飯食べようぜぇ、待ってるなぁ」

    遠ざかる足音にはぁと息を吐いて、風呂から上がれば、家に通っている猫達が足元に寄ってきているようで、足にフワフワと柔らかい毛皮が触れる。
    手を伸ばすと小さな鳴き声が耳に届く。

    「ふふふ、お前達はどう思う?」
    「にぁー」

    ひょいとその小さな身体の下に掌を入れて持ち上げても抵抗もせずに可愛らしい声をあげる。

    「ん~、そうだよなぁ、お前達も彼と居たいよなぁ」

    柔らかな腹毛に顔を押し付けながらそう言うと、猫は楽しそうにゴロゴロと喉を鳴らして私の額をぺちりぺちりと小さな肉球で叩いてくる。

    「すまんすまん」

    そっと床に降ろすとそれはそれで不満そうになぁ~んと声をあげる。

    猫を拾い上げて抱き上げたまま彼の元に足を運ぶと、足元にも猫達が寄ってきて、扉を空けたとたんに彼が楽しそうにケラケラと笑い声をあげる。

    「こらこら、猫、お前らのご飯は厨でやるから、悲鳴嶼さんにたかるんじゃねぇよぉ」

    チョイチョイと足首に触れる固い指先にこの指先もほんの二三日後には無くなってしまうのかと思うとポタポタと涙がこぼれてしまう。

    「泣くなよぉ、ご飯食い終わったら遊べば良いだろぉ?早く座ってくれよぉ」
    「すまない」
    「今日は山菜の炊き込みご飯だぜ、美味しく出来たから、早く食ってみてくれよぉ」

    腕を引く固い指、優しく握ってくる力加減。纏う柔らかい空気。
    これがあと数日すれば、何もない日常に戻るのか
    すとんと腰を下ろしてお椀を受け取ると、今日の山菜は蝶屋敷でもらったとか、今日も三人娘が可愛かったとか、三女の声を始めて聞いたとかそんな些細なことを楽しそうに語る

    「悲鳴嶼さん、おかわりは」
    「頼む」

    食べる量まで丁度良いんだ、これが…
    茶碗を受け取らずにそのまま腕を伸ばすと、茶碗を持っていない掌がひょいと私の手を引いて自分の頬をその掌に押し付けてくる

    「何だぁ?」
    「いや、健康な肌だな」
    「悲鳴嶼さんが良いもん食わせてくれっからぁ」

    すりすりと掌にすり寄る彼が可愛い。
    この姿もあと数日…
    ダバッと涙が溢れてしまうと、彼が慌ててにじり寄ってきてくれて、隣に座って涙を拭ってくれた。

    「すまない」
    「どうしたんだぁ?」
    「お前と私の中だけで納めてくれるか」
    「うん?良いぜぇ」
    「岩柱としては不死川の復活は喜ばしい、だが、私の元からお前が消えてしまうのが辛い」

    情けないと思われたかもしれない。
    反応が知りたくて、そっと彼の頬を撫でていると指先が濡れる。

    「俺、良かったって言われて複雑だった…悲鳴嶼さんがそう言ってくれて嬉しぃあんがとぉ」

    掌に頬と違う柔らかい感触がする
    これがなんの感触かは分かっているが、気付かないふりをした。

    「皆俺じゃなくて風柱を待ってるんだって思ったら、誰にも望まれてねぇ俺って要らねぇんじゃないかとか思っちまって、嬉しい」

    頬が持ち上がる感触に彼が本当に嬉しそうな笑顔を浮かべているのが分かって、私もつい微笑んでしまう。

    「なぁ、悲鳴嶼さん…」

    彼の肌が一気に熱を持ち、その身体がカチリと固まってしまう。

    「えっ?あっ!?すっ!すいません!!えっ!何で俺!えっ!!!!」

    あぁ、彼がいなくなってしまった…
    掌に触れる肌の感触もみんな同じなのに、ぼろりと涙が溢れるが、涙を拭ってくれる彼はもう居ないのだ。

    「あっ、あの、泣かねぇでください。アンタに泣かれたらどうして良いか分かんねぇんだぁ」

    固い指先が涙を拭う。
    不死川を取り巻く空気は彼と同じで、普段の憤慨している声ではない彼と同じ声

    「大丈夫だ」
    「あっ、あとぉ、その、この数日、ベタベタと申し訳ありませんでしたぁ、俺、その長男で、弟が産まれるまで甘やかされてたのに、兄になってから甘えねぇようにしてたから、その、反動みたいに悲鳴嶼さんが甘やかしてくれんの嬉しくて…本当に申し訳ありませんでした」

    何故か手から逃げることはせずに、頬を掌に当てたまま恥ずかしそうに頭を下げて見せる不死川に彼に感じたものと同じ気持ちが沸き上がる。

    「不死川は甘えたかったのか?」
    「記憶ねぇ時にあんなに甘えてたんだぁそうだったんだろうなぁ…自覚は無かったけど、確かにずっと、悲鳴嶼さんに撫でられたかったし、一緒に居てぇって思ったから」

    視線が私から外れた気配がした、それでも、私の掌はずっと彼の頬に触れている。
    暖かい肌に照れているのが分かる。
    そして、粗野で乱暴、だが、真面目。そういう印象がこの数分で塗り替えられていく。
    数日を共にした彼の姿が不死川の素の姿だったんだろうか?

    少しかさついた頬を撫でると更に肌が熱くなる。
    すりすりと指先で頬を撫でながら口許が緩むのを感じてしまうが、そのまま言葉を紡ぐ。

    「甘えたくなったら、此処に来ると良い」
    「えっ!?」

    猫のように目をぎゅっと見開いた不死川に本当に笑顔が自然に浮かんでしまう。

    「そのかわり、食事を作ってくれないか?」
    「へっ?あっはい」
    「勿論、他の時も来てくれるか?稽古もしよう」
    「はい」

    素直でちょっと裏返った声で返される言葉に彼が重なる。
    私も大概、絆されやすいと言うことか
    頬を撫でていた掌を不死川の後頭部に回すとビクッと大きく震えたが私の掌の動きを止めること無く、大人しく撫でられている。

    「不死川、もう少し撫でさせてくれるか?」
    「はっ、はいどうぞぉ」

    まだ、彼のように全ての信頼を預けてくれている訳ではなさそうだが、それでも、不死川には彼の片鱗を感じることが出来る。
    むしろ、彼とは違いずっと恥ずかしそうに視線を泳がしている姿がとても愛らしい。

    「悲鳴嶼さん、楽しいですかぁ?」
    「うん、楽しい。この数日で不死川の事を知りたくなったよ」
    「アンタって、変わってんなぁ」

    嬉しそうな気配を漂わせながら、フイッと顔ごと視線を反らせる不死川につい笑ってしまった
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