夏祭りの怪「スミス。こっちだ」
導くイサミの声とカランコロンと鳴る下駄の音。祭りのざわめきは遠く、夜の闇に溶けていく。昼の熱気をまだ残す夏の夜だが、山の空気はひんやりと肌を撫でた。
二人はいつもの任務服ではなかった。サマーホリデーを利用して日本に遊びに来たスミスとルルに日本の祭りを教えてやる!とイサミが用意してくれたのは浴衣だった。初めて袖を通す異国の衣装にスミスもルルも大層喜んだのだ。
だが、そうして祭りに繰り出した先で皆とはぐれてしまった。提灯の赤は木々の間でぼやけ、虫の声がやけに大きく響く。
「あいつら、もう下の広場まで降りてるって」
「そうなのか?」
「携帯。見てないのか?ヒビキからメッセージ入ってるぞ?」
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