ルル、スノボを始める とうとうこの年最初の雪が降った。
夕方からちらちらと白いものが混じるようになったと思ったら、翌朝には辺り一面が真っ白だ。庭のベンチもトレーニングをした芝生もみんな雪に覆われている。
「あれ、なに!?」
「雪だよ。そうか、ルルは初めて見るのか」
初めて見る雪にルルは興味津々だった。
「雪だるま、作れないかな!?」
スミスですら興奮気味である。雪を見るのが初めてというわけでもない、ましてや雪ではしゃぐような年でもなかろうにスミスは子供のようにワクワクしていた。そんな二人の様子にイサミは笑いを禁じ得ない。
「このくらいの雪じゃ、雪だるまはまだ無理だ。それはもう少し後だな」
こんな風にうっすらと積もる程度の雪ではすぐに溶けてしまう。こんな雪があと何回か繰り返され、やがてこの辺りは溶けることのない雪で一面真っ白に覆われる。イサミが子供の頃から繰り返されてきた光景だ。楽しいだけじゃなく、家の雪下ろしなど苦労も多い雪国の冬。けれど今年は今までの冬とは違う。そんな予感がイサミの胸にふつふつと湧いてくるのだった。
9230