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    mizuame1126

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    mizuame1126

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    6月に出す予定の灰七産の七と五夏五未満産の五がごななになるまでの本なんですがこれ本当に面白いの病にかかって心折れそうなのでちょっと見て見てくれませんかねぇお願いしますの気持ちですよろしくお願いします

    6月🥔🧈本のサンプル未満『七海は優しいからさ。きっとこれから先、いろんな人に好かれるよ』

     今でも、時折思い出す。
     灰原がいつも通り眩しいくらいの笑顔を浮かべて、そんなことを言っていたと。

    『不特定多数に好かれるよりも、灰原に好かれることのほうが大事です』
    『あはは! そんな心配しなくても、ずっと好きだよ? それに、七海がたくさんの人に好かれれば好かれるほど、僕の七海はすごいでしょ! っていっぱい自慢できるのは嬉しい』

     優しいのは灰原のほうなのに、とか。嫉妬はしてくれないのか、とか。言いたいことをぐっと堪えた反動で思わず顔を顰めた私を見て、少し慌てて『あ、僕のとか言っちゃった。ごめんね』なんて見当違いな謝罪を寄越したときの顔は子犬みたいで可愛かった。


     灰原、はいばら。
     わたしの、唯一。
     生きるも死ぬも一緒だと思っていた。初めての親友で、初めての恋人。


     胸の中にいるお前は、一人で時を止めてしまったのに、どうして私の時は止まらなかったのかと。
     そんなことを思ってしまうのを、どうか、許してほしい。


    * * * * *


    「相変わらず辛気臭い顔してんな」
    「……人のこと言えるんですか、五条さん」
     任務の合間に戻った高専で久々に会ったひとつ上の先輩は、見た目はいつも通りのくせに明らかに雰囲気が荒んでいた。
     辛気臭い。かつて私をそう言って笑った人はもう一人いるのに、今はいない。
     この世に永遠なんてないのだと、何度思い知らされればいいのか。取り残された私たちは互いの酷い顔色を嘲笑いあうことしかできなかった。
    「オマエ、呪術師やめて一般の大学に編入するって?」
    「ええ。五年になったら受験勉強して、四年制大学の三年への編入試験を受けます」
     明日の命もしれない呪術師が未来の話をすることに意味があるのかは分からない。しかし曲がりなりにも学校を謳うこの場所では、定期的に進路を聞かれるのだから答えるしかない。
     「生きていれば」という枕詞がつく仮定の話をすれば五条さんは泣きそうな、でも少しほっとしたような顔をした。
    「七海ならちゃんとした大人になるんだろうな」
    「ちゃんとした、ってなんですか。貴方だって来年には成人して、大人になるでしょう」
    「……なんつーか、俺は生まれたときから呪術界にいたから分かんねェけどさ。オマエや灰原や硝子に……傑、は元々一般社会の、非術師の中で育ってきたわけじゃん」
     ぽつぽつと交わす言葉。灰原を失ったあの日を境に全てを遮断して遠ざけてから、誰かとこんなに話すのは初めてだった。
     ちゃんとした大人というものを、イメージできない。夜蛾先生は呪術界においてはまともと言えるが、世間一般の教職者にとっては生徒を死ぬかもしれない場所へ送り出している時点で理解の範疇外だろう。
     五条さんの言う『ちゃんとした大人』が何を指しているのか分からなくて首を傾げると、五条さんは自分でも言葉にしづらいことなのか、もどかしそうに口を動かしていた。
    「そういう『持ってない』奴らの中で生きてきて、その後に呪術界なんて一般社会とは全然価値観が違う世界へ踏み込んだあと、やっぱり戻るって選択ができたの、すげーと思う。だからオマエは大丈夫だよ」
     空っぽの教室の前の廊下。
     五条さんと、その向かいに立ち尽くす私の間には確実に見えない壁がある。それは五条さんの言う全然価値観が違う二つの世界の壁、というやつなのだろう。
     きっと望む答えは返ってこないと知りながら、私は壁の向こうに問いかけた。
    「……逃げたと思わないんですか?」
    「思わない。思わないけど……でも例え逃げたとしても、それでいいだろ。逃げることは悪いことじゃない」
     ほら、やっぱり。
     期待した答えとは違うものを返されて落胆する。
     いつもウザ絡みしかしてこなかった五条さんが、先輩らしい顔をしてまともなことを言うなんて思ってもみなかった。いや、もしかするといつも隣にいた夏油さんが自分よりもその手の話がうまかったからやらなかっただけで、元々そういうこともできたのかもしれない。
     いつも隣で人好きのする笑顔を浮かべて元気よく振舞ってくれる灰原に甘えて、高専に入学する前よりもずっと他人とコミュニケーションをとるのが下手になってしまった私のように。
     しかしすべてを失ってしまった今となっては、それを確かめる言葉は吐くことすら無意味だ。
    「私は……私、は、私に幻滅しました。呪術界にも失望しましたが、それ以上に。誰かのためにこの力を奮うことを辞める選択を、逃げ出す選択をした私を、きっともう二度と許せない」
    「……それでもオマエは呪術師をやめるし、辞めたあとも生きていけるよ。ちゃんとしてるからね」
    「っ!」
     なんでそんなことが言いきれるんだ。
     私は自分自身を責めるのに疲れて、他の誰か、特に、残していく貴方に責めるのを代わってほしかっただけの、卑怯者なのに。
     それなのに、どうして許してしまうんだ。毎日のように誰かの命が身近な場所で散っていくことに耐えきれなくて逃げ出す、臆病者の私を。
    「それでも、万が一……オマエがオマエを許したくなったら。そのときは俺に連絡しろよ。ケー番はずっと、変えないでおくから」
    「……そんな日は、きません。電話番号は、卒業したら消します」
    「うん、それでもいーよ。保険ってやつだし。だからさ、七海」
     「お前は生きろよ」と、そう言ってくるりと踵を返してしまった五条さんが、最後にどんな顔をしていたのか私は知らない。
     勝手に溢れてきた涙を隠すために俯いてしまっていたから。

     季節は、三年になったばかりの春。
     校庭がよく見えるこの教室で、桜が綺麗だと笑う横顔を盗み見ることはもうない。
     灰原、ごめん。私はやっぱり優しくない。
     もう貴方の自慢の彼氏には戻れない。

     誰にも責めてもらえない自分を責めながら、補助監督が携帯を鳴らしてくるまでその場に佇み続けた。


    * * * * *


    「七海くん、駅まで一緒に帰らない?」
    「……すみません。図書館に寄らないといけないので」
     偏差値としては高くも低くもない都内の大学。金さえあれば、人生の選択肢が広がる。そう考えた私は経済学部を受けて無事に合格した。
     今日最後の授業終わりに声をかけてきた女性は必修と選択授業がいくつか被っており、いつの間にか顔見知りになった程度の関係なので、親しげに話しかけられるとどうしていいのかよく分からなかった。
     とても都内とは思えない鬱蒼とした深緑に囲まれた古めかしい校舎、一筋縄ではいかない人ばかりと共に過した数年間で私は随分と人付き合いが下手になった。
     中学までは本音を嘘で塗り固めて適当に話を合わせることなんて簡単だったはずなのに、あの場所はありのままの私を受け止めてくれたから、そんな処世術もすっかり忘れてしまっていたことに気付いたのは大学に編入した後だ。
     言い訳に使ってしまった以上、真っ直ぐ駅に向かうのも憚られてキャンパスの敷地の端に立っている図書館のほうへ方向転換して機械的に足を進めていく。
    「はぁ……」
     溜め息を落とすと、本当は行く必要なんてなかった図書館に入るための学生証を取り出す。
     入口の端末にかざすとピッと軽やかな音が響いてゲートが開く。ただの電子音が妙に空ぞらしく感じたのは、まだこの日常に慣れ切ってないからだ。
     これからは喉の半分が詰まったように感じるこの平穏な日々が自分の生きる世界だと言い聞かせながら古い紙の匂いを吸い込み、立ち並ぶ本の背表紙を撫でた。
    『七海って本似合うよね。頭良さそう』
    『本に似合う似合わないはないでしょう。灰原も読みますか? 面白いですよ、このシリーズ』
    『んー、僕はいいや。七海見てるほうが楽しい』
    『……あんまり見ないでください』
     本に触れただけで、思い出してしまう。
     教室で読書に勤しむ私の隣に座った灰原が愛しさを溶かし込んだ目で見つめてくるものだから、気恥ずかしくなって活字を追うこともできなくなったときのこと。
     それほどに灰原の存在は私の生活の中に深く根付いていた。
     あの陽だまりのような心地よい温かさを手にする資格が、私にはもう無い。
     あの優しい瞳に映してもらう価値は、私にはもう無い。
     薄暗くて狭い呪術界から逃げて広く自由な一般社会へ戻ったはずなのに、こんなにも息苦しい。もうこの世界のどこにも、私の居場所なんてない気持ちにすらなってくる。
     もう一度吐こうとした溜め息は、それよりも早く背後から伸びてきた手を見て飲み込んでしまった。
    「相変わらず本が好きなんだね、七海」
    「……お久しぶりです、夏油さん」
     本の背表紙を撫でていた私の手を上から覆うように被せた相手の懐かしい声につられて振り返れば、記憶よりも少し頬がこけた夏油さんがいる。
     最強の呪術師から最悪の呪詛師になった夏油さんとは、この人が事件を起こす前に会ったきりだったので三年半ぶりくらいの再会だ。
    「おや、感動の再会なのに随分とあっさりだね」
    「悲鳴のひとつでもあげるべきでしたか?」
    「くくっ、いいね。七海の悲鳴なんてレアじゃないか」
     夏油さんが手を下ろしたので、身体の向きを変えて正面から向かい合う。ただでさえ高かった身長はまだ伸びたようで、私よりも少し視線が高い。
     クスクスと楽しそうに笑う表情は高専の教室で見かけたときと大差ないように見える。とてもではないが村一つ丸ごと呪殺した人だとは思えない。
     まじまじと夏油さんの顔を見ていると、私の視線に気づいたのか長い黒髪を揺らして小首を傾げた。
    「今さら私の顔に見惚れてどうしたんだい?」
    「別に見惚れてませんけど、変わらないなと思っただけです」
    「呪詛師になったからっていきなり角とか生えないよ」
     こうやって軽口でからかってくるところも、あの頃と変わらない。
     呪術界の上層部は口をそろえて夏油さんを見つけて殺せと言っていたけど、私はこの人を責める気にはなれなかった。
     一般社会で育ってきた私たちには呪術界の常識は非常識だったし、弱者生存を説いていた夏油さんは非常識に染まり切るには精神が強すぎたんだろう。脆ければ折れて誰かを頼ることもあっただろうに、その前に振り切ってしまった。
     私は夏油さんほど強くなかったから、逃げ出してのうのうと生きているに過ぎない。
    「……それで、わざわざこんなところまで来て、私に何の用ですか」
     夏油さんが私に敵意を持っていないのは分かるが不法侵入者とのんびりしているわけにもいかないので、さっさと本題に移ってもらうために水を向けてみる。
     すると笑みを消した夏油さんは目を弓の形に細めて、私の右手を両手で握ってきた。
    「うん。君が呪術師をやめたと聞いたからね。勧誘に」
    「一緒に呪詛師をやりましょう、ですか?」
    「そういうこと。理解が早くて助かるよ」
     呪詛師への勧誘。
     その内容を予想していなかったわけではない。わざわざ思い出話をしに来たのでないなら、呪術師をやめた私の元へこの人が来る理由はそれくらいしか見当たらない。
    「『もうあの人だけで良くないですか』と君は私に言ったね」
    「……覚えてたんですか」
    「忘れるわけないだろう。灰原の前で、最後にした会話だ。君は悟だけでどうにかなると、今でも思っているかい? この世界は、歪んでいるんだ。力のある者を力のない者が数にものを言わせて食い物にしている」
     灰原を失った、あの日。呪術高専の医務室で、夏油さんと話したときのことを思い出す。
     私が死力を尽くして挑んでも弄ぶように蹂躙され、灰原の命まで奪った呪霊の祓除に向かったのは五条さんたった一人という現実に打ちのめされて、指先一つ動かす気力もなかった。

     私と灰原が行く前に、五条さんが一人で行ってくれれば灰原は死なずにすんだのに。

     強者を食い物にする弱者、という点ではあの時の私もそうだった。
     最強の五条悟に自分の不始末を押しつけて、あまつさえ八つ当たりじみた言葉まで吐いたのだから。
     『弱者』の私を勧誘する必要がよく分からず、握られたままの手に視線を落とした。
    「夏油さんは、一般人を殺して何がしたいんです」
    「アレは人ではなく猿だよ。でも、そうだね……君の質問に答えるなら、前提を変えたいんだ。この世界でのさばっている猿が一匹残らず消えて、呪術師だけの世界に変える。そうすれば、猿のために消費される呪術師の命はなくなるからね」
    「極論ですね」
    「その通り。だが、そうでもしないと猿を守るために呪術師の命が散り続ける現状は変わらない。たとえ五条悟が最強でも、一人だけでは多勢に無勢だ」
     一人だけ。
     その言葉で脳裏を過ぎったのは、高専三年の春に廊下で会ったときの荒んだ気配を纏わせていた五条さんの顔だ。
     苛立たしげに顰めていたり、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていたり、ゾッとするほどの無表情だったり、ともに高専で過ごした時間で色んな顔を見たが、あんなやさぐれた雰囲気だったのは後にも先にもあの時だけだ。夏油さんが離反して、初めての春を迎えた、あの時だけ。
    「……あの人は一人ではなかったはずです。貴方がそちら側に行くまでは」
    「違うね。もっと前から、悟は一人でも最強だったよ」
     私の言葉で夏油さんの瞳に昏い影が差す。
     五条さんと夏油さんが自分たちの関係性になんという名前をつけていたのかは知らない。でも『恋人』と名付けた私と灰原と比べてもさらにずっと深いところで繋がっているような雰囲気を出していたのは確かだ。
     『二人で最強』だと笑い合っていたあの頃の二人には戻れないと夏油さんが思うほどの何かが、私の知らないところで起こっていたんだろう。夏油さんが呪術師と呪詛師の境界線を超えてしまった今となってはその真意を聞いたところで虚しくなるだけだ。
    「……片割れの貴方がそう言うのなら、私に否定はできませんね。まあ、夏油さんのしたいことは分かりました」
     事件が起きてから夏油さんを糾弾する声ばかり聞いたし、確かに一般人の呪殺が重罪なのも分かるが、どうしても責める気にならなかった。直接対面して話を聞いてもその気持ちが変わらなかった私は大人しく引くことにした。
     本当は生きて同じ世界にいるのに五条さんの手を離してしまったこの人のことを少しだけ恨めしく思っていたけれど、あんな目を見てしまえばそんな気持ちは消え失せてしまった。
    「君のその拍子抜けするほどクールなところ、嫌いじゃないよ」
    「熱血は私の担当ではないんですよ」
    「……そうだね」
     では誰の担当なのか、なんてことは口にしなくても思い浮かべている人物は同じのはずだ。眉を八の字にした夏油さんがポツリと呟くような声で相槌を返してくる。
     灰原の喪失はきっと夏油さんの心の中にも傷跡として残っているんだろう。アイツはひと際夏油さんに懐いていたし、夏油さんも慕ってくる灰原を可愛がっていた。
     何事にも真っ直ぐに向き合う情熱的な灰原と、斜に構えては皮肉を漏らす私は、周囲からは反りが合わないのではないかと思われていたらしい。蓋を開けてみれば出会ってから三ヶ月ほどで恋人になっていたのだから驚かれたものだ。
    『僕、七海が好きだよ』
     まん丸で黒曜石のような輝きを放つ瞳に射抜かれた瞬間のことを思い出すだけで、心の一番柔らかいところを握り潰されたような痛みを感じる。
     私だって、お前が好きだった。今も好きだ。灰原。
     だから、この世界はこんなにも息苦しい。
    「……せっかくこんな所まで足を運んでもらって申し訳ないんですが私は、私をもう許せないんです。自分にできることを精一杯、頑張ることを放棄した自分を、もう二度と」
    「七海」
    「すみません」
     何度終わりにしてしまおうかと考えたか分からない。このまま生きていて、何が出来るというのだろう。灰原の元に行けるのならそれでいいじゃないか。
    『オマエは大丈夫だよ』
     それなのに、私より先に私を許してしまった人がいたから安易にそんな選択も取れなくなってしまった。
     灰原がくれたこの命を無駄遣いしていることすらも笑って許してしまった五条さんのせいで、私はどれだけ苦しくても今日を生きている。私のような奴は何も無い世界で、何も為さずに生きるのがお似合いだ。他人から大義名分を与えられて楽になるなんて許されるはずもない。
     夏油さんに頭を下げると、かつては頼りにしていた大きな掌がぽんと乗せられた。
    「……いつでも連絡を待っているよ」
     ひと撫でして離れた手を追うように顔を上げると、夏油さんはすでにこちらに背を向けて歩き出していた。
     どうして誰も、私を責めてくれないんだ。
     八つ当たりだと分かっていても嘆かずにはいられなくて、いつの間にかポケットに入っていた電話番号の書かれたメモをくしゃりと握りつぶした。


    * * * * *

    っていう原作沿い五七の話
    🎃は多分なかったことになるはっぴぃエンド本ですたぶん(多分が多い)
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