雨のち雨雨のち雨
久しぶりに藍氏の二の若君と遭遇した。
「含光君三百年ぶり位か」
冗談を効かせた挨拶をして気まずい雰囲気を飛ばそうと思ったのだが。
「くだらない」
何時もの返事を貰えて安心して横に並んだ。
「お前は変わってなくて安心したよ」
「貴方も相変わらずだな、少し・・いやなんでもない」
俺は藍湛の少しの後の消えそうな言葉が最後まで聞き取れなくて頬を膨らませた。
「言いかけた言葉の続きを聞きたいなぁー藍湛」
ひよいと藍湛の前に飛び出して顔を近づけた。
「危ないからやめなさい」
そう言って一歩足を引く。
「危ないではなくて誤解を招くからって言わないと」
魏嬰は紅い眼を細めて横目で周りを見渡した。
周りの人達別の門下達がが俺たちを見て小さな声で話していた、ほぼ俺の悪口だろうけど、含光君の話もしている奴もいるのには驚いた。
「言わせておけば良い」
その後俺に対して誰かが卑猥な言葉を発して気持ちが悪くなった。
なんだよ俺に執着してるって、嫌われてるの間違いじゃないのか。
あの含光君を満足させれるとか俺も試してみたい。
「ふざけるな俺と藍湛は何もな・・痛いおい含光君」
俺の腕を掴むと近くの宿屋に入っていく。
おいおいまじかよ含光君という綺麗で潔癖な男が自分でも思うがこの問題児で貧相な俺と宿屋に入るかと、しかも昼間から、これは知られたら一大事だぞ。
「お泊まりですか?部屋は二部屋ですか」
宿屋の親父も龍族のお客で緊張してるじゃないか。
「泊まりで部屋は一部屋でかまわない」
「えっ」
「おいが・・・・んぐっ」
名前を言おうとした瞬間禁言術をかけられて言葉を遮断された。
「料金は先に支払う」
俺は藍湛に腕を掴まれたまま二階の角部屋に放り込まれた、しかもすぐ内鍵を閉められて寒気を感じた。
「えっと、藍湛。俺何かした」
藍湛は無言で俺を見つめているだけだった。
「とっ兎に角座って話そう」
そう言うと無言で頷くと部屋の中にある茶器でお茶を淹れて気まずい空気が流れた。
「すまない」
「腕を掴んでここに押し込んだ事?さっきの禁言術」
「両方だ。後」
俺は部屋の窓を開けると違和感を感じた・・あれっさっきまで昼間だったはずなのに夜になってる。
「なぁ藍湛、お前この部屋に何か術でもかけたのか」
「魏嬰、窓を閉めて外と見ないで」
俺は気にせずに外の様子を見て下の方から誰かの会話が聞こえてホッとして視線を送る。
あれ?下で会話してるの、俺と藍湛だ。
「魏嬰」
この光景昔あったような・・昔?今ではなくて?
夷陵老祖と含光君の姿、いつの俺なんだ。
そして雨の音が聞こえ始めて傘が開く音と
「使いなさい」
「お前はどうすんだよ」
「問題ないもう一本ある」
この会話はつい最近あったことだ。
「なぁ藍湛・・ここは何時でどこなんだ」
「魏嬰私の声以外聞かないで、見ないで・後」
背後に近づいてくる藍湛に本能的に恐れを感じていた辛うじて視線だけは下に向けれて下に見える傘を見つめていた。
そしてその傘が動いて紅い眼をした俺の口が動いた。
にげろ
「後?何・・かな・・・藍湛」
俺の背後に白い袖と大きな手が出てきて窓を閉めると左手で眼を覆い隠され右腕で抱きしめられ耳元で
「君を・・貴方を迎えにきた」
そう俺に向かって言った刹那目の前が真っ暗になって意識が途切れた。