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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    タイトル通り
    全年齢

    止まない雨と典の手入れを待つソハヤの話雨の音が聞こえる。




    ゆっくりとソハヤは目を開く。座ったまま、少し眠っていたようだ。手入れ部屋の障子からは月明かりも差し込まずまだ暗い。月も星もこの雨を呼んだ雲に覆われているのだろう。ザァ、と雨はひっきりなしに降っている。強くなったり、弱くなったり。近くでぴちゃん、ぴちゃんと水滴の音。屋根を伝って落ちた雨粒の一つなのだろう。

    ソハヤは耳を澄ませて雨音の強弱を楽しんだ。やがて少し経ってから、手探りで行灯を探して火をつけた。夜目は効かないが見えにくいだけで見えないわけじゃない。小さな灯りがソハヤと、眠っている大典太を照らす。兄弟の顔は青白く、ぴくりとも動かない。もう10日も、手入れ部屋で眠りについている。重傷を負ったが審神者によって手入れされたはずなのに目を覚さないのだ。先程までは熱にうなされて汗をかいていたのでソハヤは甲斐甲斐しく体を拭いていたりしたのだが、落ち着いたのか今は死んでいるかのような静けさだ。

    冗談じゃない。

    大典太の口元に手を当てて呼吸を確認する。大丈夫。息はある。そもそも兄弟は寝相が良い方で、静かに寝ることだってあるじゃないか。言い聞かせてみても、どうも落ち着かなくて彼の心臓のある場所に耳を当てて鼓動を確認してしまう。

    とくん、とくん、

    サァーーー

    大典太の鼓動、外の雨音。規則正しいその音がまたソハヤを眠りに誘う。
    そもそもソハヤが大典太の手入れ部屋にいるのは、手入れ後も起きない大典太光世への霊力供給のためであった。審神者の霊力が強すぎて弱った大典太には取り込めないらしく、それが回復を遅らせているという。獣の親が子に口移しで餌を与えるように、ソハヤは審神者の霊力を自刃の中で噛み砕いて同派の波長にしてから大典太に注ぐのだ。
    それなりに体力を使う作業、その割に回復の兆しが見られない。

    次の非番は紅葉狩りにでも行こう。そんな些細な約束もしていたのに。三池揃って治療のために強制的な非番になるなんて思いもしなかった。

    気は長い方だと思っていた。きっと刀であれば10日なんて一瞬であったろうに、ヒトガタを得てたった10日でやきもきしてしまう。随分と人間のようになったものだ。

    こんな感覚を知ってしまって、刀に戻ったらどうなるのだろう。目の前の兄弟にも簡単には会えなくなって。そんな日を一日千秋の思いで過ごすのだろうか。

    そうなったら俺はーーー

    いや、これは考えてはいけないことだ。色んなものを冒涜し、きっと主にも仇なすことになる。

    ソハヤは頭を振った。思考を無かったことにした。

    注いだ水が浸透するように、大典太に入れた霊力が体へ浸透している。一度に入れることは出来ないので少しずつ注ぐのだ。大典太の枕元にある氷砂糖を一つ口に入れた。審神者の霊力が固まって出来たそれをソハヤは口内で溶かしてから大典太と唇を合わせる。少しずつ、息を吹き込むように。

    「……っ…そは、や?」

    「兄弟……!?」

    「……」


    夢うつつでソハヤの名を口にしてすぐに気を失ったのか、また死んでいるような小さな呼吸音を繰り返す。

    それでも大典太の声を聞くのは久しぶりで、ソハヤは少しだけホッとしたのは確かだ。

    嬉しくて、泣きそうだ。

    「あははは、っは〜〜〜ぁ。よかったぁ」

    先程よりも少しだけ良くなった顔色を見れば、大典太が目覚めるのもすぐだろう。ソハヤは立ち上がって手入れ部屋の戸を開ける。まだ雨雲はあったが雨脚も収まり始め、あたりも明るくなり始めていた。

    湿気はあるが空気の入れ替えにはちょうど良い。部屋の中から雨に濡れる庭の花々を見ながら大典太が起きるのを待とう。

    きっとこの長雨が止む頃には2人で紅葉狩りにも行けるだろうから。



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