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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    白痴が好きです
    救いはない
    私だけが楽しい話

    #典ソハ
    formerSovietUnion

    恋刀が折れた上に敵に犯されて心の壊れたソと何もできない二振り目の典「霊力を与える以外の愛情表現の方法を知らない」攻めと
    「攻以外の人間が化け物に見えてしまうようになってしまった」受け
    でお題
    診断メーカーより







    「ソハヤ、朝飯だ」

    蔵の扉を開けて大典太は中の兄弟に声をかける。
    返事の代わりにくすくすと笑い声が聞こえた。

    「きょうはみつよとでかけるんだ!だいじょうぶ!すぐにもどるって!あはっ、ととさまはしんぱいしょうだなぁ!」

    蔵の中には座敷牢が、そしてその中に薄い着流を身につけたソハヤノツルキが居た。手足を鎖で繋がれて、目元を布で隠されている。

    酷く舌足らずな言葉はソハヤの声だ。今日もまた、大典太が来たことにも気付かずに空想の中で笑っている。
    ととさま、とは自分たちの刀工のことだろう。打たれた時、付喪神ではなかったが霊力のある三池刀には自我があった。妖怪と神の間のような存在だったのだろう。その時の刀工と大典太とソハヤで暮らしていた時の記憶が今日の記憶らしい。

    大典太にもその記憶は存在した。本霊の記憶だからだ。しかしソハヤが呼ぶみつよ、は大典太のことではない。先の戦いで折れた一振り目のこと。大典太は二振り目であった。

    出陣先での遡行軍の強襲。恋刀同士の三池刀二振りの殿。仲間たちが体制を立て直して戻ってきた先に待ち受けていたのは、折れた大典太光世の本体を守りながら敵に凌辱されているソハヤで。その時からソハヤはすっかり壊れてしまっていた。使い物にならない刀は刀解するべきはずなのに、審神者は治るかもしれないなどと愚かな希望で彼を蔵で療養させている。

    二振り目の大典太を顕現してソハヤの世話係にさせたのも審神者であった。それが良いのか悪いのか大典太にはわからない。ただ従うだけであった。

    手足の鎖は審神者には伝えずに、大典太がソハヤにつけさせたものだった。時折正気に戻って早く折ってくれと自らを傷つけるのだ。兄弟の要望に応えてやりたい。だが最初から気が狂ってしまった刀とは今生でそこまでするほどの関わりがなく、大典太にとっては主こそ第一であった。

    「ソハヤ」
    「……みつよ?」

    近づいて声をかけ直すと今度は気づいた。目元を覆う布が視界を遮っていることにも頭が回らず、探す仕草をするので彼が触れられるまで近づいた。

    「みつよだぁ!きいてくれよ、またととさまがくちうるさいんだ!」
    「そうか」

    霊刀とはいえ、不浄の者に犯されて分霊であれど、ソハヤの神格はすっかり落ちてしまっている。霊力を溜め込むことも出来なくなってしまったので大典太が食事、と称して注がねば顕現が解けてしまう。主の望みはあくまでも顕現している状態のソハヤの療養であった。病魔切りではあったが切ることしかできない大典太にソハヤを治療することはできない。ただの延命であったがそれが主が望むことなら仕方ない。

    太刀の体躯で不釣り合いな幼い表情をしたソハヤが大典太に何をされるのか首を傾げた。毎日行っていても都合よく記憶は壊れるらしい。

    「お前だけ都合がいいな」
    「みつよ?」
    「いや、なんでもない」

    口を開けろ、と言うとソハヤは素直に従った。
    ソハヤの顎を掴んで固定すると大典太は唾液を舌で伝わせてソハヤの口の中に流し込む。

    口を吸えば楽なのに、唇を合わせないのは折れた光世へのけじめだった。

    「みつよ、あまい、きもちい」
    「そうか、ちゃんと飲み込め」

    霊力を凝縮させたのだから、ソハヤの体に入れば上手く補われる。
    ソハヤが珍しくもっと、と強請る。かちゃかちゃと手足の鎖が音を立てて縋りつくのでつい大典太は驚いて体勢を崩してしまった。仰向けに倒れ込んだ大典太。咄嗟だがソハヤのことは庇えたらしく腹の上で紅い目が大典太を見ている。大典太の右手には彼の目を覆っていたはずの布があった。

    しまった、と思ったときには遅かった。

    「ヒッ!!!!いやだっ!!いやだぁ!!!ごめんなさい!ごめんなさい!許して!ゆるしてぇ!!!やだっ、やめてくれっ!きょうだい!!たすけて!!!たすけてきょうだ、……ッぅ」

    腹の上で錯乱したソハヤの首を絞めて落とす。顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

    遡行軍はソハヤへ凌辱だけでは飽き足らず、ある呪いを施した。全てが敵に見えてしまうもの。つまりこの本丸に帰った今もソハヤにとっては敵の中で捕われていることと変わりないのだ。

    視覚を奪えば過去を夢想し、戻せば敵を見て辱められたことを思い出して怯える刀。
    兄弟はそんなものに成り下がってしまったのだ。

    乱れてしまったソハヤの髪の毛を手櫛で解かす。大典太は可哀想と思うだけだ。

    「早く二振り目のお前がくるといいな」

    そうすればきっと審神者もこのソハヤに執着しなくなってようやく刀解する気になるだろう。
    人間とは替えがないから臆病な選択をするのだ。

    このソハヤが早く幸せになることを願いながら大典太はその日まで霊力を与え続けるだけだった。



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