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    haru_ni_ebi

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    「誰にも言わないでくれ」

    #鍾蛍
    zhonglumi

    秘密の話 この世の中には秘密だからいいものというのが、確かにある。
     例えば、誰と誰がどういう関係だとか。
     そういうものは秘密だから、余計に何かを搔き立てたりするのだ。
    「…………うわ」
     思わず、声を漏らしたのは見てしまったからだ。
     家庭教師であるところの鍾離と、自分の妹の蛍がキスをしていたのである。
     確かにすぐに部屋へ戻ってこないとは伝えたものの、だからといってまさか、そんな関係だったとは思いもよらなかった。それに――声を漏らしたことで、どう考えても鍾離には気づかれてしまった気がする。
     とはいえ、なかったことにするしかないだろう。
     二人の接触が終わってから、少し経って空は部屋の中に入った。部屋の中ではなんとも言えない空気が漂っている。
     その空気には、先ほどの二人を見ていなければ、喧嘩でもしたのかと思ってしまうようなよそよそしさがあった。空は蛍に話しかける。
    「ごめん、どこまで進んだのか教えてくれるか?」
    「あ、うん。えっと、このページの……」
     蛍が教えてくれるのを聞いていると何やら視線を感じ、空は顔を上げた。
     ひ、と声が出なかったのは褒めてほしい。こちらを見ている鍾離の瞳が黄金色に輝いていたのである。
     何も言わないまま、こちらを見ていた鍾離は暫くすると視線を下げた。心臓が妙に早く脈打って、正直、少しだけ居心地が悪い。
     だが、空は一つ息を吐くと鍾離をにらみ返した。その行動に彼は驚いたようで目を瞬かせ、肩を竦める。
     そんなやりとりをしている間に説明を終えたらしい蛍は、空を見上げた。
    「聞いてた?」
    「そこそこ」
    「それは聞いてないってことじゃない? もう……」
     呆れる蛍はため息をつき――ふと、彼女のスマートフォンが着信を受けて震え始める。ちらりとそれをみた蛍は、電話に出てくるねと二人に告げて部屋を後にした。
     残された鍾離と空はしばしの無言の後、鍾離の方が先に口を開く。
    「頼みがある」
    「なに?」
    「誰にも言わないでくれ」
     その声は言葉の弱弱しさの割に覇気があって、ずいぶんと本気であることがうかがえる。空は肩を竦めた。
    「蛍のためだから、そのつもり」
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    DONE猗窩煉/現パロ
    実家から出て2人で同棲してます。
    ライトな「価値基準が違うようだ!」が書きたくて書いたお話です。
    喧嘩したり家飛び出したりしてるけど内容は甘々。
    「君とは価値基準が違うようだ!!実家に帰らせてもらう!」

    近所中に響き渡る声と共に、騒々しく杏寿郎は出ていった。
    またか、と勢い良く閉められた玄関のドアをぼうっと見つめること10分。リビングの方から間の抜けた通知音が響く。重たい足取りで通知を確認すると、それはまさしくさっき出ていった杏寿郎からのメッセージだった。

    『今日は実家に泊まる』

    …律儀と言うか何と言うか。喧嘩して出ていったにも関わらず、ちゃんとこういう事は連絡をしてくるのだ、杏寿郎は。

    先程までどうしても譲れないことがあって口論していたのに、もう既にそのメッセージだけで許してしまいそうになる。

    駄目だ、と頭を振って我に返る。この流れもいつものことだった。実際、今までは俺の方から折れている。

    杏寿郎と一緒に住むようになったのは一昨年の12月。あれから1年と少し経っているが、住み始めた頃も今も、些細なことで言い合いになって杏寿郎が家を飛び出すという事がたまにある。

    その度に「価値基準が違う!」とか何とか言って出ていくものだから、正直なところ、デジャブの様なものを感じてかなり傷ついていた。

    だが毎回、言い争いの原因は 3534