大人忍岳2なんとなく、めちゃくちゃ、無性に、タコスが食べたくなって、俺は思っていることをすぐ口に出すタイプだったので、それは隣に座って静かに文庫本のページをめくっている侑士の耳にもしっかり届いていた。本を読んでいる時の、俺のこういう、独り言なのかはたまた会話のはじまりなのかよく分からない発言が侑士に拾われるかどうかは五分五分の確率で、俺は別にどちらでもさして気にしないことにしている。ちなみに、返答が欲しい時にはまず名前を呼ぶことになっていた。
「ええんちゃう」
どうやら今日は拾われる日だったみたい。しかし、ええんちゃう、て………いやまあ、そう言うしかないかも知れないけど、だったら返事しなくて良かったんじゃないか………?まあ別にいっか、自分が放ったくせにゆるゆると打ち返されて力なく転がったボールを、俺は取らずにそのまま放置して、手元のスマートフォンで家の近くのメキシカンを調べることにする。
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