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    ჯびたず

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    ჯびたず

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    先日ご協力いただいた、弊デ髭バソのハロウィンコスプレ投票結果1位の『ゴースト×囚人』の、お話です。
    ※モブがちょっと出てきます。

    ##髭バソ

    (髭バソ)ゴースト×囚人「君は誰だい? 私の手にかかった者かな?それとも、ここにずっといる先輩かな」
     極力、小さな声で話しかける。そもそも、声に出さなくても通じるのかもしれないし、逆に全く通じることはないのかもしれない。
    『…………』
     現に、目の前の男からは返事はない。普通の人間の見た目であるが……いや、普通ではないか。長身の自分が見上げる位置に、頭がある。二メートルを越すであろうその体躯は上半身裸で赤いズボンを履き、巻かれている包帯にはところどころ血が滲んでいた。
    「私は人の顔を覚えるのは得意だが……視界に入らないところで君が巻き込まれたのなら、顔を知らなくても無理はないな」
     ここに入れられた時は、先客がいるのでとても驚いた。だが、看守は彼のことには何も触れない。戸惑い、彼と看守を交互に見ていたら、『壁がどうした。ベッドも別に壊れていないだろう』と言われて頷くしかなかった。
     それはそうだ。ここは独房だから。
     
     私は海賊船団を率いる船長だ。航行中、予想外の場所で海軍の船に遭遇した。天に座す御父様も他のことでご多忙だったのだろう。戦闘の末お縄となり、ここへ放り込まれた。仲間とは、別のところに収監されているようだ。
    「……相当な傷だな。戦ったのか」
     彼は、頭にも包帯が巻かれていた。目の付近にも怪我をしたらしく、片目は隠れている。黒髪、頬から顎にかけて輪郭は髭で覆われ、ボサボサではあるが口髭もある。鷲鼻には、古傷と思われるものもあった。私に関係しているのかとも思ったが、この顔なら見れば忘れそうもない。別に海の男とは限らないな、と思い直した。
    「私はそのベッドを使うが、君も横になりたければ使ってもいいよ」
     壁から鎖で繋がり、畳める形になっている極めて簡素なベッド。その頭側にいる彼に言うと、私は遠慮なく横になった。疲れていたし、警戒心を露わにしていても看守を苛立たせるだけだ。チラリと見上げるが、彼は壁に寄りかかって立ち、正面を向いたままの姿でいる。反対側の壁には何もない。
    (この土地に関係していて、囚人だったわけではないのかな)
     その方向に窓でもあれば、収監された彼が外の何かに執着していたとも考えられるが、何もないので分からなかった。遠くを見ているような目をした、彼の顔を下から暫し眺める。
     ふと、顔の近くにある手を見ると、太い指には指輪をしている。髭にも装飾があるので、豪快な見た目だが怪我をする前は身なりも整えていたのだな、と興味が湧いた。
    (ああ、彼も海の男だ)
     顔の角度を変え、指や掌にある傷を見つけて、親近感を持った。
    「……触ってもいいかい?」
     答えはない。構わず指先に触れようとしたが、私の指は空を切った。生きている人間と変わらずくっきりと見えているが、やはり彼は別の存在なのだな、と何故か溜息が出た。
    「君も、海に生きたんだな……。私はバーソロミュー。暫くここにいるから、宜しく」
     正面を向いたまま、彼が笑ったような気がした。

     それからは一日中、何をしている時でも彼は同じ姿勢で壁際にいた。反応は無いが、私は仲間と雑談する感覚で彼に語りかけた。静かな日は声を出すと思ったより響くこともあるので、心の中で。それでも多少、独房での生活に心強さを感じた。

    「……おい」
     十日ほど経ったある日のこと。一人の看守が、食事の時間でも無いのに現れた。返事をしながらも訝しむ私にニヤリと笑いかけ、後ろを向かせて柵越しに手錠をかける。聴取でもあるのかと思ったが、看守が中に入って出入口に施錠した。
    「……ふん」
     房の中央に私を立たせ、顔を見て鼻で笑った直後、私を殴りつけた。床へ昏倒したところへ、襲いかかってくる。
    「ぐっ……何のつもりだ‼︎ぐ、うぅっ」
    「はッ、気にいらねぇ、んだよ!」
     襟元を掴んで締め上げられ、更に殴られる。他の房と離れているせいか、騒ぎを聞きつけるものはいない。枷がついた脚では抵抗もろくに出来ず、顔に腹に拳が入る。息も荒く看守がズボンに手をかけ、ニタァと笑ったとき。
     ゥオォォオオォオ……!
     嵐の海で聞く風の唸りとも、怨嗟の声ともつかない恐ろしい音が、鳴り響いた。同時に地響きのようなものがして、壁とベッドを繋ぐ鎖が耳障りな音を立てる。
    「な……何だ何が起きて、ッ……⁉︎」
     看守が狼狽えて身形を整える。独房の柵が人が揺らしているかのようにガシャガシャと鳴り始め、音に気づいたのか数人の足音が近づいてきた。看守が舌打ちをし、目を瞠る私の視線の先も気づかないまま、腕を引いて身体を起こそうとする。
    「おい!何をしている‼︎」
     足音が独房の前に到着する直前、柵の揺れが止まり、外から声がかかった。私を襲った看守は、何やら言い訳をしながら外へ連れ出され、私も手当てのため出ることになった。
    (助けて、くれたのか……ありがとう)
     つい先程まで、悪魔のような形相でこちらに向かって口を大きく開いていた彼は、今は元の無表情に戻っている。心の中で礼を言うと、確かに彼の唇が笑みを作った。
     私に何かあると、不味いのだろう。看守が暴行したということもあり、丁寧な傷の手当と身体の確認を終え、真新しい囚人服を着せられて私は独房へ戻った。
     変わらず、彼は壁に寄りかかっている。
    (ありがとう。お陰で私は大丈夫だよ)
     殴られた顔は腫れ上がり、あちこちまだ痛むが、彼の前で両腕を広げて笑う。今まで通り、彼の反応はない……筈だった。
    「え……っ」
     ふわりと音もなく動いた彼に、抱きしめられた。私が触れようとした時は、指が空を切ったのに。体温は無いが、『抱きしめられている』という感覚はある。恐る恐る彼の背に腕を回せば、抱き返すこともできた。ただ、力を強めたら、また腕がすり抜けてしまいそうで。それが怖くて、出来なかった。
    『良かった……』
     耳ではなく頭の中に、安堵したような彼の声が響く。ああ、こういう声なのか……と思うと、心なしか彼の腕の力が強まった気がする。彼の行動に対して、不思議と嫌悪感や恐怖はない。
    (どうして……)
     さまざまな意味の、疑問を投げかける。彼は私を抱きしめたまま、話し始めた。
    『俺を見つけて、話しかけてくれた……お前が危なかったから……アイツ許せねぇ』
     全ての疑問に答えようとしたのだろう。間をおいて彼はゆっくりと話した。私の話を楽しんでいてくれたことも、看守が今まで他の房の囚人にも様々な無体を働いていたことも、初日から私をおかしな目で見ていたことも。
    (……ありがとう。嬉しいよ)
    『なぁ……一緒にいても……いいか』
    (勿論だとも!君のおかげで、ここでの生活は思ったより悪くないんだ)
     私が入ってから、彼も楽しく思ってくれていたらしい。朝晩の祈りの時間は、多少辛いそうだが。うん、祈りが始まると、何となく彼の姿が薄くなっていた気がする。終わって少し経つと戻っていたが。召されるわけではないのかな、辛いということは。良し悪しは別として、私の船団では今まで怪談らしいものを耳にしないのも、そのせいか?そこまで思って、彼が笑っていることに気づいた。
    『んじゃ、まぁ……改めて宜しく』
    「……!よろ、しく」
     彼がもそりと動き、頬に口付けられた……のだと思う。思わず声が出たが、間近にある彼の顔を見て、悪戯っぽい笑みにこちらも笑った。
    (なぁ……名前を教えてくれ。呼びたい)
    『エドワード。エドでも何でもいい』
    (ああ。エドワード。宜しく)
     独房で、新しい友人が出来た。出来れば、無事に出てエドワードも船に連れて行きたい。そう思うと、またエドワードが笑っていた。

     メイクで青白い顔色になった黒髭が、複雑な表情をしている。
    「どうした?」
    「……ゴーストの拙者、海賊じゃねぇの?でもお前は、海賊なの?」
     どうも、設定に疑問があるようだ。
    「うん……それでもいいが……ゴーストといえども、目の前に黒髭が現れたら、まず私はトドメを刺したくなるし、お前の最期は監獄じゃなかっただろう。それに海賊になる前は、私は至って善良に生きていたし?他に思いつかないなぁ、独房行きの悪事なんて。はっはっは」
    「善良て」
    「うん。何だ?嘘はついていないぞ」
     また黒髭は首を傾げている。失礼な。
    黒髭おまえに監獄は似合わない。しかもそこに何らかの執着を残して、海でもない場所で地縛霊になるなど、もってのほかだ」
     そう言うと、黒髭は視線を逸らして頬をぽりぽりと掻いた。メイクとれるぞ……ああ、髭で隠れてるか。
    「まぁ、ね……んで、俺らどうなんの」
    「……何らかの恩赦か騒動で出るな、私は。お前を壁から引き剥がして連れて行き、海賊稼業に返り咲く。私が散った後は晴れてゴースト同士、ずっと一緒だ。今の私がモンスターなら、ゴーストになった後で、出会った頃の姿を再現している状態かな」
     まぁ、これくらいは盛ってもいいだろう。ハロウィンのコスプレはモンスターか魔女、という条件にも合う。
    「ちょ、駆け落ちっぽくね?wwwつかその流れ、昔の拙者ちょい入ってるしwww」
     …………あ。
    「もーホントお主、拙者大好きなんだからぁ♡あっ、今日は包帯でメカクレだから⁉︎」
    「〜〜〜うるさい‼︎包帯は……ああもう、早く出るぞ‼︎」
     叫んだ直後、やや薄手の囚人服の身体を、がばっと抱きしめられる。黒髭の体温を感じて、嬉しそうに耳元へキスをされて……ブワッと上がった熱が伝わってしまいそうだ。うん……今日は特別な日、だから。
    「後で、そのメイクが落ちるくらい汗をかかせてやる」
    「キャッ、楽しみ〜♡」
     こんなことを言うと普段なら、『へぇ?』とか言って笑うのに、素直に(?)喜ばれた。

    (死後も一緒、ねぇ……)
    (一つは、今の状態が近いかな……)

    「何だ、ニヤけたりして」
    「そっちこそ、何よ」
     部屋を出ても緩んでいる顔を見て、互いに笑う。顔を寄せる二人の足元で、足枷の球に描かれたメカクレ顔が笑っていた。
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