あいつが悪い 激しかった営みも終わり、簡単に身を清め、微睡んでいる時だった。兄弟が発した一言で、その場の空気が変わってしまった。
「兄弟、今日も可愛かったぜ。」
「…お前の方が、可愛い。」
「何言ってるんだ、俺の下で喘ぎ声上げてる兄弟に勝るもんはねぇよ。」
「…いや、俺に“もう一回ダメか…?”とねだってくる兄弟の可愛さに勝るものはないぞ。」
ソハヤはよく俺に可愛いと言ってくる…いつもならば軽く流すか、受け入れる。しかし、今日はいつもと違った…いつもに増して兄弟の表情が可愛かったんだ。あの真ん丸な目でじっ…と見つめられたら“はい”以外の選択肢は存在しない。だから、つい強めの口調で反論してしまった。
先程の穏やかな空気はどこへやら…殺伐とした空気へ変わっていくのを肌で感じ取られるほどだった。
「ちょっと待てよ、俺が中から出ようとするともの足りなさそうな表情で抱きついてくる兄弟のほうが可愛いに決まっているだろう!」
「おい、それよりも一途に俺を求める兄弟が一等可愛らしい!さっきだってずっとくっついてきて…それはもう可愛かったぞ!」
「兄弟、これは納得するまで語り尽くす必要があるようだな。」
「…あぁ、兄弟相手だろうと容赦はしないぞ。」
そのあと俺たちはひたすら語り尽くした。それはもう…主には決して聞かせられないような言葉の応酬、白熱するに連れて大きくなる声量。議論が纏まらず、手が出る寸前までいったところで…
「大典太光世、ソハヤノツルキ…静かにしてくれるかい?」
普段の柔らかく、優しげな声とも…戦場での猛々しい声でもない平坦な声の髭切から告げられてようやく争いに終止符が打たれたのである。