がちり。歯が当たった音がした。
慌てて後ろに下がろうとした彼女の頬を包み込み…否、掴んで、唇に噛み付く。
歯が当たってしまったのは、経験不足のせいだ。これから練習すれば良い。何度でも。
目は閉じない。閉じるなんて勿体ない。こんなに近くで彼女を見ることなんて滅多にないのだから。…近すぎてぼやけていたとしても。
驚いた様に目を見開き、悔しそうに顔を歪めながら抵抗する様に俺の肩を押す彼女の手首を掴み、そのまま壁に思いっ切り押し付けると彼女の腕は呆気なく壁に張り付いた。
なんて非力なのだろう。
(…可愛い)
そっと彼女の唇に舌を這わせる。びく、と体が震えて縛り付けられた腕に力がこもったが案の定ぴくりとも動かなかった。