「あ、カイト」
絵名の視線は少し上、センター街にあるモニターを見つめている。
オレもつられて見上げた。
聞き覚えのある、しかしどこかその人とは違う声色。
『おはよ〜彰人くん』
へらりと笑う青い髪が脳裏に浮かんだ。今モニターにデカデカと映っている彼とは顔は一緒なのに似ても似つかない。
ちら、と絵名を見やる。こいつバーチャルシンガーなんて聴くのか?そんな好きだったか?
「何お前、好きだったの?」
カイトさん、と言いかけてカイト、と呼び捨てにする。
「別に好きじゃないけど。えっと、友達がね」
ううん、と絵名は唸っている。
こいつの友達。桃井さん、暁山、朝比奈さん…と思い浮かべる。姉の友人の趣味なんて知らないがバーチャルシンガー好きなんていただろうか。
「別に何でもいいでしょ。っていうか交友関係把握しないで」
「把握しないでも何も、お前が友達少ないから覚えちまうんだからしょうがねえだろ」