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    きょう

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    主に24/雑食
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    きょう

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    17歳カライチ。チョコレートの日から、2週間くらい経った日の話。
    ツイッターにもあげたけどツイッターはおそらく消すのでこっちに残しておきます

    #カラ一
    chineseAllspice

    after chocolate見つけたのは故意じゃなかった。
    ボクの筆箱がおそ松に勝手に持っていかれ、勝手に返されたと伝えられたのがついさっきのこと。テキトーに鞄に突っ込んどいた、と言われてボクの鞄を確認したけれど、そこに筆箱はなかった。
    だとすると、いい加減なおそ松のことだし、違う弟の鞄に突っ込んだんだと思う。
    だから、一番近くにあった鞄の中を覗いて探そうとして、別のものを見つけてしまった。

    「チョコレート……」

    四角いブロック状の、コンビニで買える一番小さなサイズのチョコレートだった。二月十四日は疾うに過ぎた。コンビニで気まぐれに買ったまま、忘れたものなのかもしれない。
    でも、その包み紙には見覚えがあった。手に取ってひっくり返してみる。
    『一松くんへ』。やっぱりそうだ。これは、クラスメイトのとある女子が全員に配った義理チョコだ。ボクも貰った。というか、一松にはボクから手渡した。席にいないから、渡しておいてと託されたから。一松君のぶんだから食べちゃダメだよ、なんて言われて、その場でマジックに一松の名前を書いて渡されたのだ。多分おそ松ならそんなの気にしないで食べただろうけれど。
    明らかな義理チョコだった。それでもありがたいバレンタインのチョコだから、その日のうちにこっそり食べた。おそ松は貰ったその場で食べていた気がする。
    そのチョコを、大事にとってあるんだろうか。鞄に入れたまま忘れている……なんてことはないだろう。目につくところにおいてある。ボクが鞄を開けて一目わかったんだから。
    じゃあ、どういう理由で食べずにとってあるんだろう。まさか——、まさか。
    黒い液体がポタリと落とされたみたいだった。じわじわと心に広がった染み。その正体はなんだろう。ざわざわする。
    その時、こども部屋の襖が開いた。はずみで、そのチョコをズボンのポケットにいれてしまった。

    「あれ。カラ松?」
    「いいい一松?」
    「なんでおれの鞄開けてるの?」
    「えっと……これは。おそ松がボクの鞄から勝手に筆箱とっちゃって、でも、違う鞄に返しちゃったみたいで。えっと、だから……ごめん。その、勝手に見て」
    「謝らなくていーよ。見られて困るもの入ってないし。あった?筆箱」
    「今開けたばっかりで、探してなくて」

    嘘だった。動揺して声が上擦って、早口になる。焦らなくていいよ、と一松が近づいて、鞄の中を見る。

    「ない。他の奴の鞄かも」
    「そうみたい。探してみる」

    ホッとした。鞄の中を勝手に見たから、もっと怒ると思っていたけど。
    鞄の口を閉じようとした一松が、あれ、と声を出した。心臓がドキリと大きく鳴る。

    「あのさ。中にチョコ……入ってなかった?」
    「えっ……チョコ?」

    ドキン。ドキン。心臓が痛いくらいに大きく早く動く。冷や汗が出そうになる。

    「ごめん。知らない」
    「……そっか」

    一松が眉根を寄せた。困ったような顔。でも、落胆していることをこちらに悟らせないようにしている。ぽとり。また一滴、液体が零れた。

    「……大事なものだった?」
    「え?」
    「大事なら……、ボクも探すよ」
    「いや、全ッ然?チョコ食べたい気分だったからさ、買ったんだけど」

    あはは、と一松が笑った。

    「コンビニのやつだし。持って帰る途中で落としたのかもしれないから」

    だから気にすんなよ。そう続けた一松の笑顔はどこかぎこちない。
    一松も嘘を吐いている。コンビニで買ったのも、大事に思ってないなんて言うのも、全部嘘だ。胸の奥で広がった苦い思いを誤魔化すように、ボクはポケットの中のチョコを布の上から触っていた。
    一松が部屋から出ていく。チョコを探しに行ったのかもしれない。
    はぁ。ため息をひとつ。誰もいなくなったこども部屋で、こっそりとチョコレートの包みを開ける。熱で周囲が少しだけ溶けていた。ぱくりと一口で頬張る。甘い。

    「ごめんね、一松」

    手にべとついたチョコがまとわりつく。喉に引っかかるような甘ったるさにまた一つため息をついた。



    家のどこを探しても、ゴミ箱を見ても、チョコレートは包み紙さえどこにもなかった。カラ松が食べちゃったのかもなぁ、なんて思った。それか、おそ松兄さんか。他の兄弟か。
    プライバシーなんて無いのと同じだ。偶然、または故意に、鞄を開けたら、そこにチョコがあった。だから食べた。その程度のもの。

    『はい、チョコレート』

    ころんと差し出されたチョコ。嬉しかった。単純だ。仕方ないだろ。こちとら高校生だぞ。たとえそれがクラスメイトからの義理チョコだったとしても。
    ため息をつく。
    ————大事なものだった? 
    聞いたカラ松の顔が頭を過る。こちらを窺う怪訝そうな顔。大事だった。大事なんだよ。
    だって、お前がくれたものなんだから。




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