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    小説用

    @2_fmii

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    「できた」はそのうち支部にも上げるかも

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    20│カラ一 ⚠首絞めあり

    ##松
    #カラ一
    chineseAllspice

    breathing for youあなたは『優しくされる度にこの人は自分のことを好きじゃないって言い聞かせなきゃいけないのがツラくて苦しい』カラ一の四男を幸せにしてあげてください。shindanmaker.com/474708
    ╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

    もう、限界だった。耐えられなかったのだ。気付いたときには手を出していた。驚きで見開かれた瞳も気にせず、晒された男らしい首を締め上げる。力を込めた指のしたで上下する喉仏がいやに生めしかった。
    視界の端でごろりと転がる紫の毛玉。

    「だってこんなに傷だらけじゃないか」

    先程までこの毛玉の泥を落としながら優しく撫でていた男の言葉を思い出す。
    可哀想だろう、と。
    可哀想、なんて、どの口が言うんだろうか。誰のせいでそうなったと。今まで俺がどんな思いでお前を見ていたかも知らないくせに。
    今年こそ。この年こそ。この恋心を葬らなければと。いつもそう思うのに、わざわざ埋めたものを善意のつもりで掘り返して慈しむお前が憎くて憎くて堪らない。

    ただ振り撒かれる優しさも身勝手な哀れみも兄弟としての愛情も、もう沢山だ。
    全部俺のものにならないなら、いっそのこと──
    そんな思考に冒される前に自分ごと捨ててしまいたいのに、それさえもお前は赦してくれない。いくら拒んでも与えられる何の他意もない自分本位な優しさは、真綿で首を締めるかのようにどこまでも俺を苦しめる。もうどうにかなりそうだった。

    だから、

    晒された首は先ほどより青白い。
    眼下に広がる布地は青く波打つ海のようだ。
    指先から伝わる脈動が徐々に早まっていく。
    そろそろ抵抗されると思っていたのに、水中を揺蕩うかのように伸ばされた手はただ頭を撫でるだけだった。唖然として顔を上げると息も絶え絶えに開閉される口が何かを伝えようとしている。
    あぁ、この動きはこれまで何度も見た。
    俺がお前のお節介に反発するたびに返していた、
    『 ご め ん な 』の動きだ。

    毛玉の傷口からじわりと血が流れる。
    手を離した先でけほけほと咳き込む音を聞きながら、滲む視界をその穢れた手で覆った。寄せ合う水面へ落ちていく滴は塩辛い。こちらまで溺れそうだった。

    お前がいるとろくに生きていけもしない。
    どうすれば楽に息をすることができるのだろう。

    何も告げられず、金魚がただ気泡を吐くようにはくはくと開く口から、おまえなんてだいきらいだと零れ落ちる。


    「俺は、好きだよ」


    静かな掠れ声が耳に届いた次の瞬間、自分とおなじ造形の温度を持ったそれが唇を塞いだ。


    ◇ 


    「へ……?」

    突然塞がれた唇に放心する。
    いま、俺は何をされたのだろうか。状況を受け止めきれずに目の前で瞬く睫毛をただ眺める。

    ごめんな、
    いつもの調子と全く同じ声色でカラ松はそう言った。あの真摯さと申し訳なさを詰め込んだ優しげな声だ。
    想いを告げてもいないのに断られているようで、そう言われるたびに惨めになった声。
    実際幾度も夢で断られその度に再生された台詞と同じ声色で、悲しげに顔を歪めて尚もカラ松は続ける。

    「お前がいつにも増して、あまりにも辛そうだったから、何と言ってやればいいのか分からなくて……でもいつもみたいな本心を隠した言葉では今にも死んでしまいそうで……ただ、お前を誰より愛する人間が居ることを知っていてほしかったんだ」

    お前は俺のことを嫌っていてもちゃんとブラザーとして見てくれようとしていたのに、ごめんな。

    発された言葉がまた意外すぎて、俺はただポカンと口を開けたままこちらへ無理に微笑もうとしているカラ松を眺めていた。健康的な首にうっすらと残ってしまった赤い手形が痛ましい。明日には治るだろうか。
    ……まだうまく事を呑み込めないが、どうやら俺たちはお互いずっと思い違いをしていたらしい。

    「なぁ、一松」

    なにか返さなければと思った矢先、再度手を引かれ抱きしめられる。

    「そんなに何度も自分を捨てるなら、お前を俺にくれないか」

    撫でられた頭はやはり毛玉に触れるときと同じ優しさで、抱きしめられた腕のなかは土の中よりひどく暖かい。
    俺は答える代わりにカラ松の背に腕を回すと、これまでにないほど深く、ひとつ、息をした。






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    irohani8316

    DONE94の小説です。ロド風味……というかCP要素がほぼないですが、ロド推し工場から出荷されています。街を常に昼状態にしてしまう「吸血鬼日光浴大好き」のせいでシンヨコが大変なことに……というエンタメ(?)小説になりました。ラブというかブロマンスな味わいが強いかも知れません。
    長い昼の日 汗ばむくらいに燦々と照りつける太陽の下、俺はレンタカーのバンを路肩に留めると運転席から降りて、荷室のバックドアを開けた。そこには、青天にまったく似つかわしくない黒々とした棺桶が横たわっている。
    「おい、動かすからな」
    一応声をかけるも返事はない。聞いているのか聞いていないのかわからないが、別に構いはしない、俺は両手で棺桶の底を摑み、バンの荷室から引きずり下ろした。ゴリラゴリラと揶揄されるくらいに鍛えてはいるものの、さすがにこの体勢から、ひとりきりで重い棺桶を丁寧に扱うのは難しい。半田でも連れてくればよかったが、あいつも他のやつらと同じく街中を駆けずり回っていて、手伝ってもらうのは忍びなかった。
    案の定、無駄に長い棺桶は向こう側の端の方が落ち、地面に当たってガツンと派手な音を立てた。この衝撃であいつは一度死んだな、たぶん。俺の肩に乗って見守っていた愛すべきイデアの丸、もといアルマジロのジョンが「ヌー!」と泣いている。
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