【hrak】猫と上耳「……にゃーあ、にゃーあ」
校舎から寮へと向かう帰り道、下手くそな鳴き真似を聞いた耳郎は思わず立ち止まった。妙に作った声だが聞き覚えがある。方向は右斜め前方、植え込みの茂みの向こう。集中して聞き分けるまでもない。
甘ったるい鳴き真似をからかってやろうと思い立ち、足音を殺して道の脇の植え込みに近づいた。雑草と樹木の枝葉の間をそっと覗き込むと、見慣れた黄色い頭が見える。
──やっぱり。
どうやら野良猫でもいるらしい。上鳴はこちらに気が付くことなく、「にゃあにゃあ」と下手な鳴き真似を続けている。耳郎は草木の隙間からそっと“イヤホン”を伸ばし、上鳴の肩のあたりをツンツンと突いた。
「にゃー……!? えっ、なに!?」
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