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    江 谷

    過去のあれこれを供養してます。

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    江 谷

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    エルリ前提でミケハン、未遂。
    ◆お題は『bookworm』(http://cherrydrop.nobody.jp/)さまより、【10のキスの仕方】をお借りしました。

    5,寸止め(ミケハン) なんか楽しい事はないものか、とハンジが両手の平を上に手首を上下させながら訴えている。
     机に浅く座るように寄りかかっていたミケが、腕を組みながらため息をついた。

    「お前の言う、楽しい事とは何だ」
    「そんなの決まってるだろ。聞くかい? いまさら」
    「いや、いい……」

     はあーっと肩を落として、ハンジは熊のようにウロウロと部屋の中を移動する。
    「まだか……まだなのか……」
    「落ち着け、ハンジ」
     いっそ今から行ってやろうか、とハンジが半ば本気で呟いているようだったから、ミケは静かに制止した。
    「今行っても、割を食うばかりだぞ」
    「分かってる! 分かってるんだが、ヒマなんだよ~」

     ミケもハンジも人を待っている。
     常に忙しく過ごしていると、こんな風に空いた時間をもったいなく感じてしまう。かといって、何かするには中途半端で、しかも待っている相手の都合が読めないから、結局、何かをすることもなく時間を消費しているのが二人の現状だった。

    「ああもう! 本当だったら今頃はとっくに終わってるはずだったのに……」

     今度は恨み節か、とミケが窓の外を見ながら思っていると、いつの間にかハンジがすぐ側まで寄って来ていた。
     ミケが視線を戻すと同時に、ハンジの右手がミケの頬に触れた。

    「……どうした」
    「……ヒマなんだよ」

     いつもとは打って変わって、しおらしい声を出すハンジは伏し目がちに呟いた。

    「そうか、ヒマか……」
     ミケは組んでいた腕を解いて、ハンジの腰を抱き寄せた。
    「ふふっ、いいね、こういうの」
     静かな声のまま、ハンジの指がミケの頬から輪郭をたどり、すくうように顔の向きを変えさせる。ミケはされるがままに従った。

    「こういうこと、してるんだろうなあ……」
    「してるだろうな……」
     もう少しで唇同士が触れ合う、その隙間を残してミケが知らせた。
    「リヴァイが来るぞ」
    「あとどのくらい?」
    「10メートル」
    「ふぅん。見せつけてやろうよ」
     ハンジが言い終わって間も無く、部屋の扉がノックもなく開いた。

    「てめぇら……人の部屋で何をやっている」

     部屋主であるリヴァイが不機嫌そうな声で問う。
    「大人の火遊び。リヴァイも混ざる?」
     猫なで声でハンジはからかったが、リヴァイは表情も変えずミケの横まで来ると、手にしていた紙束をバサリとミケの左胸に突きつけて寄越した。

    「決定稿だ。他の隊にも回しておいてくれ」
    「了解した」
    「……ところで、いつまでそうやってるつもりだ。ハンジ」

     ミケの腕はとっくに離れていたが、ハンジはまだミケの右肩に頭を預けたままだ。
    「なに、当てられてんの?」
     ニヤニヤしながらハンジは煽る。
    「自分はさっきまでエルヴィンと、もっとエグいコトしてたくせに」
    「……出て行け、クソメガネ」
    「ああ、元々そのつもりだよ。あんたがエルヴィンを独り占めにしなきゃ、私の仕事はもっと早くに終わってたんだ」

     ハンジはパッとミケから離れると、
    「ミケ、尻。踏んでる」
     ミケの太ももを指裏で叩いて机から退かし、書類の入った封筒を後ろ手に振りながら部屋を出て行った。
    「……俺も戻る」
     ミケが去り際、スンと鼻を鳴らしたのを聞いて、リヴァイは大きく舌打ちをした。
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