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    はるもん🌸

    @bldaisukiya1

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    酒を飲んでは記憶が飛ぶ。魏無羨は誰かと酒を飲むのが好きだ。藍忘機は沢蕪君から術を教わる事にした――――。

    #忘羨
    WangXian

    あなたのために魏無羨は目を見張った。
    なんと琴を練習するために設けられた部屋で、藍思追と藍景儀が堂々と天子笑を膝に乗せ「飲むの楽しみだな」「ふふ、そうだね」などと談笑しているのだ。
    魏無羨を見つけた藍景儀が手を振って呼びかける。

    「魏先輩!先輩も一緒にどうですか?」

    酒の席を断るはずのない酒豪の彼は目をぱちくりさせ、左右に誰もいない事を確かめて部屋に入る。

    「お前ら…いいのか?」

    視線は酒壺に釘付けだ。

    「藍先生の許可はもらってるから大丈夫なんだ」

    藍啓仁の頭がおかしくなったのか、いや、正常になったのだろうかと魏無羨は考える。

    「コレにはワケがあるんです」

    藍思追が事情を話した。
    20歳を超えた藍景儀と藍思追は所用で沢蕪君の付き添いとして清談会への出席する機会が多くなっている。そして同時に蘭陵金氏の老人達に無理やり酒を勧められる機会も多くなった。酒を断ると、酔っぱらった彼らは問答無用で剣を抜いてくる事があるのだ。

    魏無羨に鍛え上げられた二人なら、蘭陵金氏の老人など剣を抜かずともねじふせられる。しかしできる事なら穏便に事をすませたい。そこで、沢蕪君の出番というワケだ。

    「沢蕪君は酒を体内で水のように変化させる術をお持ちなのです」

    せっかく酒で心地よくなった体を元に戻すのはもったいないとは思うが、酒に弱い姑蘇の弟子にはピッタリな術だと魏無羨は感嘆する。

    「「含光君!」」

    後ろには、今朝まで口づけをしていた愛しい道侶がいた。

    「藍湛!なんでお前まで?」
    「兄上の術を学びに」

    藍忘機は清談会への出席を常に断っている。酒を飲む機会などほとんどない彼がなぜこの術を学びにきたのかと魏無羨は首をかしげる。

    「含光君、沢蕪君はもう少し時間がかかるそうです。こちらへどうぞ」

    藍景儀が含光君に座布団を一枚用意する。じかに床に座っていた魏無羨の尻あたりに目線をやる含光君に気づき、藍思追が慌ててもう一枚の座布団を魏無羨に渡した。

    「お前らもう20歳か。酒ぐらい飲めって言われるわけだ。そうだ藍湛、お前は別にこの術を学ぶ必要はないんじゃないか?」
    「君こそ、必要ないのでは」

    魏無羨は笑う。

    「俺はただの見学だよ。藍景儀に呼ばれたから座ってるだけ」
    「きっとこの酒は残るでしょうから、終わったら魏先輩に全部あげようと思って」
    「かしこい奴だな、藍景儀」

    ぐりぐりと藍景儀の頭を魏無羨が力強く撫でる。

    「で、藍湛。理由は?」

    藍忘機は答えず、ジッと魏無羨を見つめる。
    これでもう、答えがわかってしまった。藍忘機は、魏無羨と酒を酌み交わしたいのだと。そして、弟子達がいる前では自分から理由を言いにくいのだ。

    「はは、藍お兄ちゃんは俺と晩酌をしたいんだな?」

    何度か魏無羨の晩酌に挑戦したことのある藍忘機だが、毎度飲んでは記憶を無くしていた。
    藍忘機の耳たぶに赤みがさす。夫の手をぎゅっと握った。

    「俺の道侶はなんて可愛いんだろう!はやく一緒に酒が飲みたいよ!」
    「………うん」

    藍忘機はかすかにほほ笑んだ。

    ほのかに甘い雰囲気に眩暈がしつつ、二人の弟子は静かに沢蕪君を待つのだった。


    fin.
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    MOURNING「今、誰かが私を呼ぶ声がした。魏嬰、君か?」
    月夜を見上げ、藍忘機は遠い昔に見たかわいらしい笑顔を思い出していた。そんな独り言をつぶやいたことがあった。魏無羨がいなかった時間があまりにも長すぎた。
    そのせいか、今ある幸せが、まるで嘘のように感じる瞬間があるのだ――――――――。
    あなたがここにいる『魏嬰、なぜ君が死ななければいけなかったのだ…』

    背中の痛みよりも、胸の痛みがこたえた。冷泉でどれだけつかろうとも、癒える事はない。
    兄が「時がたてば忘れ行くだろう」と言いに来てくれた事がある。

    されど、その日は来なかった。

    師弟が大きくなっていく様を感じ取るたび、時間の経過を感じる。
    かつて子供だった彼がはしゃいでいた姑蘇の山道を歩いては魏無羨の笑い声を思い出す。なぜ一緒に遊びに出かけなかったのだろうと後悔しても、もう遅い。

    彼はあんなにも自分を気にかけてくれていたのに。愛しさは増すばかりだった。会いたくて、愛しくて、つらかった。



    「――――――ッ」

    藍忘機は息を少しみだしつつ目を開けた。
    体にずしりとした重みを感じる。魏無羨だ。むにゃむにゃと自分の髪の毛を口に入れて何か言っている。力加減を忘れてつい、強く抱きしめてしまった。
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