遠慮のない姫と大魔道士‐共に征こう「キミのための法衣をまた用意したの。魔界に行くなら着ていってね。今度は時間をかけて作ったから大魔王のメラゾーマに耐えられるか分からないけどメラミぐらいなら耐えられると思うわ」
「もしかしておれが何度か耐火実験に付き合ったあの布?」
「そう、キミのメラゾーマに耐えられるの。パプニカの今の最高傑作よ!」
「ありがてぇ。あんときも姫さんの用意してくれた法衣が無かったらあの時点でおれは死んでたもんなぁ。姫さんの色んな準備の有難さを改めて実感する」
「そう言ってくれて嬉しいけど。でも当時はメラで燃えたというのはちょっとショックだったわよ。急いで作らせたとはいえパプニカの知恵の結晶なんだから」
「大魔王のメラは並みのメラゾーマより強力だったし、法衣の下は服も無事だったんだから充分だろ。ほんとに助かったよ」
「……」
「なんだよ」
「キミって大魔王の前に旅人の服で立って生き残ったのね」
「そうだけど。姫さんも似たようなもんじゃなかったっけ。よく考えると凄いよなぁ最後に立ってたダイと姫さんとおれ。布、布、布じゃねぇか」
「あたしは王家の服を着ていたから。ダイ君の着ていた闘衣やその法衣と似たようなものよ」
「じゃあダイと姫さんはそこそこの防御力か。っておれだけが旅人の服だったのか!」
「そう言ってるじゃない。一応ね、漂流していたキミやマァムを見つけて、法衣が無いことを知ってすぐに新しく作るように手配したんだけどね」
「あれから一気に戦況が動いて決着ついたもんな」
「だから本格的に作り始める前にもう要らなくなったんだけど。メラで燃えたと聞いた法術使いたちがすごく悔しがって。どうしても作りたいと言ってきたの」
「メラで燃えたのは間違ってねぇけど、普通のメラじゃねぇのに」
「そんなの大魔王の凄さを間近で見てない人たちにはわからないわよ。それで彼らが法術も駆使して編んでキミの力も借りて検証して検証して検証して作ったのがソレ!」
「助かる。ありがとな」
「彼らに言っとくわ」
「ん、姫さんにもだよ」
「あたしは何もしてないけどね」
「でも、最初におれ用に法衣を作るように手配して、術師の作りづつけたいって気持ちに応えて、今も新しくできた法衣をおれ用にって決めてくれたのは姫さんだろ」
「そうだけど」
「姫さんはさ、あの時いなかったけど。姫さんの法衣で大魔王からおれを守ってくれたし、今度もきっとそうなるさ」
「……妙に優しい言い方するわね」
「あの時もそうだったろうし、今も魔界に行けなくて本当は悔しくて寂しいだろ?でも姫さんはそこを見せずにちゃんと仕事するから偉いと思うぜ」
「ポップ君て時々そういうところあるわよね」
「ん?」
「自分に向けられる感情には鈍いくせに」
「くせに?」
「あたしのことはいいの。とにかく他にも色々と用意したから、速くダイ君を連れて帰ってきて!」
「おう、任せとけって」
-END-