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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    執監狡宜。
    800文字チャレンジ45日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ただ、呟いただけ(言えるはずがない) 佐々山を亡くして以来、狡噛は人が変わってしまった。潜在犯堕ちして執行官になったのもそうだが、彼はあのお人好しな男を、猟犬として有用だった男をトレースするようになってしまった。煙草も酒も、もしかしたら女も。それでも俺が落ち着いていられるのは、彼とまだ寝ているからだった。もし寝ていなかったら、全てを共有していなかったら、それこそ発狂していたかもしれない。そんなものにすがるなんて、馬鹿げているのかもしれないけれど。
     セックスを終えて狡噛の部屋を持する時、俺は何も言わない。狡噛は俺に何も言わないし、これまでのように甘い言葉もくれない。それどころか俺を突き放そうとする。なのに俺を抱く。執行官は不自由な身柄だからかもしれない。理由などないのかもしれない。これまでの地続きで抱いてくれているだけなのかもしれない。それでも、俺は狡噛が寝てくれていることに救われていた。
    「明日は朝から出勤だぞ。あまり酒を飲むなよ」
    「俺の勝手だろう」
     セックスを終えて、タバコを吸って、俺がシャワーを浴びて出てきたら狡噛は上半身裸のまま酒を飲んでいた。佐々山が残したものだ。そして手元には標本事件のファイルがある。俺は叫び出したくなった。もう忘れてくれと思った。父が帰って来なかったように、このままでは狡噛も帰って来れなくなる。俺を残してどこかに行ってしまう。事件を解決したら、きっとどこかに行ってしまう。それは勘だったけれど、当たっているような気がした。この先きっと何かが起きる。何かが起こって、俺たちは離れ離れになる。そうしたら、この男は帰って来ない。父のように。
    「煙草臭いのに酒臭いのが混ざると面倒なんだよ」
     狡噛にそう言って、俺は服を着た。そして部屋を出る扉に手をかけた。お前の身体が心配なんだ、それは声にならなかった。俺はただ小言を呟いただけだった。誰に聞かれてもいい小言を呟いただけだった。そして俺は日常に戻るのだ。愛しているとも何も言わないで、身体だけを繋げて。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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