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    短い話を放り込んでおくところ。
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    POIPOI 192

    宜野座さんの髪の毛について。
    800文字チャレンジ81日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ほどけた髪(そのうなじに) ギノの乱れた髪を撫でるのが好きだ。激しくセックスをして絡まった髪を解いてやって、それに口付けるのが好きだ。もちろん彼は嫌がって、自分の手櫛で直そうとする。まぁ、それを見るのも好きなのだけれど。ギノがなぜ髪を伸ばしたのかは知らない。俺の記憶の中の彼はずっと髪を短くしていて、だからSEAUnで再会した時は驚いたものだ。彼の知らないことなど、絶対にないと勝手に思っていたから。でもそんな彼の変化にももう慣れてしまって、歩くときにひょこひょこと揺れる様とか、セックスの度に解く様とか、好きな様子も増えた。多分、俺は彼ならば何でもいいんだろう。でも、俺の変化を彼はどう思っているのだろう。俺が佐々山を真似て煙草を始めた時も、酒を嗜むようになった時も、ギノは何も言わなかった。ただ顔をしかめて、俺を見るだけだった。それが答えなんだろうか? 何も言わないでいる、それが彼の答えなんだろうか?
     俺たちは出会ってもう二十年ほどになる。その中で変化したのは外見だけではない。彼は父親を許し、俺はまだ母親に許されていない。それを彼に言うつもりはない。言ってしまったら、俺を潜在犯に堕とした自分のせいだと思うだろうから。ただ、いつか母と和解できる日が来るのなら、彼を一番に会わせたいと思う。友人としては知っているから、ちゃんと恋人として。髪の綺麗な恋人として。
     
     朝起きると、ギノが髪を櫛でといていた。俺は腹をかきながらそれを見つめて、まるで猫が身なりを整えているようだと思う。じゃあ今日は雨か? そんなことを思って、俺は目をこすりながら彼が淹れてくれたのだろうコーヒーを口に含んだ。
    「遅いぞ。早く朝食を取れ。出勤だ」
    「一緒に? 嫌がるのに? あ、これはお前が好きな出島のクロワッサ……」
    「黙れ、早くしろって言ってるだろう」
     ギノは今日はピリピリしていた。何かあったのかもしれない。まぁ、それもおいおい聞くさ。それくらいの付き合いの長さなんだから。
     ギノが髪を結ぶ。さらされたうなじは美しく、俺は今日はあそこに口付けてやろうと思った。仕事が終わったのなら、絶対に。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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