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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    ベッドの上での2人。
    800文字チャレンジ94日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    気まぐれな熱情(どっちも同じ) かさついた指があごをくすぐる。手のひらが喉仏をさすって、それはだんだんと胸元に下がってゆく。俺はもうほとんど服を着ていなくて、彼は直接俺の肌に触っている。セックスは嫌いじゃない。肌と肌を合わせるのは嫌いじゃない。けれど彼の気まぐれなそれには驚いてしまう。こうやって気まぐれに彼が俺を抱く時、彼は何かを抱えている。俺に言えない何か、機密として秘することを強いられている何かを彼は持っているのだ。だから彼は俺に触る。そうしたら楽になるような気がして。そうしたら秘密を持つ苦しみから逃れられるような気がして。そんなの幻なのに、彼は俺を使って楽になろうとする。俺はそれを拒まない。彼が楽になるのなら、楽になった気分になるのならそれでいい。だって俺も同じようなことをするから。楽になろうとして彼に抱かれることがままあるから。
     
    「ほら、ミネラルウォーター」
     セックスが終わってベッドで寝転んでいると、デニムだけ履いた狡噛が俺にペットボトルを渡してきた。俺はぼんやりとそれを受け取る。彼はどこか話したげで、俺はそれを聞いてやろうかと思った。けれど結局俺は沈黙を意味する水を飲み、そうはしなかった。洗礼を受けるように水に沈み、奇蹟をその身に受ける。俺は幸せだった。秘密を共有しないくらい、そんなのどんなカップルでもありふれている。ただ、俺たちはそれが重かっただけで。
    「この後食事はどうする? 行きつけの店でいいか?」
    「シャワーを浴びてから考えるよ。そろそろ暑い季節になって来たから、冷たいものもいいかもな。あぁ、日本古来じゃ辛いものを食べるんだっけ?」
     軽口をかわして、俺はペットボトルの水を全て飲み干した。そしてベッドに寝転んだ彼を眺めて、そしてそれに近寄ってキスをした。辛いものを食べたら、キスすら億劫になるから。その前にしておこうと思ったのだ。
    「なんだ? 二度目のお誘いか?」
     それを勘違いして狡噛が言う。彼は気まぐれだが、俺もいい加減で気まぐれだった。相手を翻弄するのが好きなのだ。
    「お前がそう思うんならそうかもな」
     裸のまま立ち上がり、狡噛にキスをする。そしてゆっくりとシャツを着て、シャワーに向かう。彼は付いてくるだろうか? それとも俺は一人きりなのだろうか?
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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