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    短い話を放り込んでおくところ。
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    美佳ちゃんのネックレスの話。
    800文字チャレンジ32日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    イミテーション(コスチュームジュエリー) 二十歳の誕生日プレゼントは、正真正銘のダイヤモンドのネックレスだった。母はそれくらい持っていないさいと言い、父もそれに頷いた。でも私はどうしてか喜ぶ気にはなれず、ずっと仕舞い込んだまま今日まで来ている。私が付けるのはイミテーションのダイヤと決まっている。なぜならばそれをくれたのが先輩だから。美佳ちゃんには本物が似合うと思うんだけど、こんな仕事でしょう? 失くしたら大変だもの、コスチュームジュエリーとして使ってね。そうあの人が言ったのだ。だから私はどんな場所にも先輩がくれた本物と見まごうダイヤモンドの大ぶりのダイヤとパールを模したネックレスをつけていくことにした。母がくれた押し付けがましいものじゃなく、父が私に相応しいと言った本物のネックレスじゃなく。
     
     
    「課長はコスチュームジュエリーをつけるんですね。うん、似合ってる」
     公の酒の席でそう言ったのは、新しく着任した監視官だった。これが本物じゃないと見分けるなんて、なかなか目が肥えている。さすが先輩が推薦した人間、と言うところだろうか。
    「駄目なの? あなたは嫌い?」
    「まさか、ココ・シャネルもその価値を認めてますよ。何カラットの宝石を身につけるかが問題なのではなく、大切なのは洋服にいかにマッチしたジュエリーをつけるかということってね」
     男が女のジュエリーについて語るなんて無粋だ。私はそう思ったけれど、彼が語るままにしておいた。今は幽閉の身分にあるあの人がくれたネックレスを、否定しない彼が少し好ましかったのもある。
    「貰い物なの。本物は仕事中に落としちゃったら困るでしょうって言われてね」
    「じゃあ課長はこの宴会の最中にも仕事が起こるって思ってるんですか?」
    「もののたとえよ」
     ワイングラスを傾け言うと、新任の監視官は楽しんで、と去って行ってしまった。私はネックレスを触る。私に本物のダイヤは似合わないのだろうか? でも先輩とどこかにいく時は、それをつけていたいと思う。先輩に守られながら、あの人とこんなふうに楽しみたいと思う。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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