サンシャイン・オブ・ラブ2 ラジオを聴くのをやめた狡噛は、ソファの隣に座り、デバイスを操作する恋人のうなじにキスをした。拒否はされなかった。宜野座は基本的に狡噛の欲望を拒否しない。愛されていると思うが、彼が仕事でヘマをした時は別だった。彼は罰されたいと思っている。狡噛の青い目で、宜野座は罰されたいと思っている。宜野座は狡噛の深い青い目を見つめつつ、自分からワイシャツを脱ぎ始める。それがまるで最初から決まっていたかのように、決まりごとを自分で処しているだけのように。だが、狡噛にとってそれはショックな出来事だった。隙間を埋めるようなセックスが嫌いなわけではない。ただ、そんなものに自分が関わるということを、狡噛は少し恐れているきらいがあった。狡噛は愛を知って生きてきた、いや、愛を疑わず生きてきた。それは宜野座とは全く違った生き方で、佐々山を失った時ですら、執行官に堕ちた時ですら、宜野座の愛を疑うことはなかった。それで無茶もしたし、彼には迷惑もかけただろう。だが狡噛は、それでもやはり自分は愛されていると思っていたのだ。だが宜野座は違った。幼い頃から潜在犯の息子として一人生きて来た彼にとって、狡噛の傲慢とも言える愛情は毒のようなものだった。ラジオを使った愛の告白が嫌だったわけじゃない。あれが彼の本心だと宜野座は断言出来る。もうすぐ夜が開ける/朝日が疲れたまぶたを閉じさせる時/もうすぐ俺の愛するお前の側に行くよ/お前に驚きの全てをやるために向かってるところだ/今すぐダーリン、お前の側へ行くからさ/星たちが降り落ちて来たら、俺がお前と一緒にいるから。きっと歌の通りに夜が明ける時狡噛は宜野座の隣にいるのだろう、いてくれるのだろう。だが、宜野座はワイシャツを脱ぎ、狡噛にまたがりながら、それを信じられないでいた。狡噛は戻ったというのに、いつかこの安寧が破られやしないかと、そう思ってしまったのだ。狡噛はそんな身の入らないセックスをしようとしている宜野座を見て、かわいそうに、と思った。それも傲慢な感想だったが、彼の心からの理解だったのは事実だ。狡噛はそんな可哀想な恋人にキスをしてやりながら歌をつぶやいた。俺ったら、もう随分と長いこと、自分の行くべき場所を待ち続けて来たよ/お前の愛が輝く陽の光の中で。お前は拒否するかもしれないが、理解出来ないというかもしれないが、それが事実なんだ。二人はキスをする。狡噛は優しいそれを、宜野座はそれを受けて自分がそのキスに値する人間だと安心する。そう、安心出来たのだ、仕事で馬鹿をやらかしても、受け止めてくれる相手はいた。二人はキスをする。狡噛が歌をつぶやく。まるでストリップショーだなと宜野座は思いながら、自分の身を恋人に委ねる。