Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    シュウ

    ワーフリとシロを愛してます。
    今はシロ×マグノスにお熱らしい。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    シュウ

    ☆quiet follow

    1年目以降、2年目未満。
    アルクとシロの2人が揺らぎに巻き込まれ、極寒の地に漂流したら…?と言う書きたい事のみ書いたお話。※少し流血表現があります。

    ——見渡す限りの銀世界。
    雪が降り積もる大地には、僕が歩いた足跡だけが点々と残っている。
    ……寒い。
    どれほど歩いただろうか。
    いつまで経っても景色は変わらず、終わりが見えない。
    吹雪はますます激しくなり、視界がどんどん悪くなる。
    「——ッ!」
    寒さに震え、歯を食い縛る。
    止まるわけにはいかない。
    ここで立ち止まったら、もう二度と歩き出せない。
    ……それでも、身体は正直だ。
    疲労と寒気で次第に歩く速度は落ちていく。
    ——その時、霞む視界にこちらへ向かって飛来する物体が見える。
    「……!」
    咄嵯に身を屈めると、頭上を鋭い風切り音と共に何かが通過していく。
    顔を上げ振り返ると、そこには巨大な氷柱が地面に深々と突き刺さっていた。

    「ギャァオォオオオッ!!」
    けたたましい雄叫びが響き渡る。
    「……ドラゴン!?」

    その姿を見て驚く。
    おそらく廃竜の類いだ。
    白銀に輝く鱗に覆われた身体。
    頭部には二対の角。長い首。
    そして翼。
    全長は5メートル前後で比較的小型ではあるが、この状況では脅威であることに変わりはない。
    ……この足場では逃げるのは無理だ。
    戦うしかない!

    剣を抜き構えるが、竜はその巨体に似合わぬ素早い動きで一気に距離を詰めてくる。
    「っ……!」
    振り下ろされた爪を辛うじて避けると、そのまま後退しつつ距離を取る。
    だが、間髪入れず氷柱が飛んでくる。
    「ぐぅ……!」
    ギリギリで回避し、反撃しようと試みるもスピードが違い過ぎる。

    「ガアアッ!」
    ガキンッ!と鋭い音が響き——
    「ッ——!!!」
    剣が弾き飛ばされる。
    そのまま勢いよく吹き飛び、背後にあった木に叩きつけられる。
    「——か……っ……ぁ……」
    衝撃に息が詰まり、呼吸ができない。
    寒気に全身が震え、立ち上がる事ができない。
    「……っ」

    ——竜の腕から氷柱が放たれようとしている。
    避けないと……!
    そう思うが、手が——足が動かない。

    ——ステラ……ライト……シロ……。
    ——ごめん。
    僕、もうダメみたいだ……。


    目を、閉じる。


    ———————…………

    ——痛みが……ない?


    「なんとか……ッ……
    間に合った、な……ッ……!」

    聞き慣れた声に目を開けると、見慣れた大きな白い背中があった。
    腹部を貫通した氷柱を握り締め、立ち塞がるようにして立つシロの姿に、一気に意識が覚醒する。

    「——シロ……?シロッ!!」
    「……おう、待たせたな」
    振り返り、不敵に笑うシロ。
    「待ってろ……すぐに終わらせてやる」
    そう言うと、竜に向き直り一歩前に出る。
    「ギャオォォォォッ!!!」
    竜が叫ぶと同時に、一瞬で距離を詰め腕を振り下ろす。
    シロはその場を動かずにそれを両手で受け止める。
    轟音を響かせ地面が大きく揺れ動く。
    「ぐあ"ア"ァッ……!」
    受け止めた衝撃で腹部から血飛沫が上がり、シロの口から苦悶の声が上がる。
    それでもシロはその場から一歩も動かない。

    「——はっ、そんなもんかよ?」
    シロはそう言うと、竜の腕を捻じり上げるようにして掴み力任せに引き剥がす。
    「ギイッ……!?」
    バランスを崩す竜。
    「ぜやあーーーッ!!!」
    怒号を上げると、拳を突き上げ殴りつける。
    殴られた竜は大きく仰け反る。

    「——くたばれ……!」
    シロの鋭い爪が光った瞬間——

    「グガァッ……!」
    竜の身体が爆散し、粒子となって消え去る。
    同時に、シロの腹部に突き刺さっていた氷柱も消滅する。

    「——ッ!ガフッ……!」
    その場に膝をつき、吐血するシロ。
    腹部からの夥しい量の出血で白い被毛が真っ赤に染まる。
    「シロ!!!」
    「ハァ……ハァッ……!大丈夫、だ……!」
    慌てて駆け寄る僕を手で制すると、シロは布袋から包帯を取り出し、手慣れた手つきで応急処置をする。

    「……ッ……フゥッ……。
    ——な?こんなもん屁でもねえ」
    立ち上がり、傷口をポンポン叩くシロ。
    無理に笑っている事は一目瞭然だったけど、命に関わるような重傷ではないことに安堵する。

    「いや……無茶し過ぎだよ……」
    「てめえにだけは言われたくねえな……」
    そう言ってシロは僕の頭を軽く小突いた。

    「いたっ…!まぁ……そうだね……。
    ——ありがとう、シロ。
    本当に助かったよ」
    「礼なら後にしろよ。
    このままここにいたら2人揃ってあの世行きだ。
    とにかく、吹雪を凌げる場所を探さねえと……。
    立てるか?」

    シロの言葉に首を縦に振る。
    正直立っているだけでも辛い状態だが、大怪我をしてるシロにこれ以上余計な負担をかけたくなかった。

    「よし、行くぞ。
    しっかりついて来い」
    シロに促され、歩き出す。

    ————————

    雪が吹き荒れる中を、ただひたすらに歩く。
    寒さと疲労で意識が遠退きそうになるが、シロが支えてくれているおかげで倒れずに済んでいる。

    「……しっかりしろ、アルク……!!」

    「……うん」
    「もう少しだ……!」

    「……うん……!」

    返事をしながらシロの顔を見ると、歯を食いしばり荒い呼吸を繰り返しながらも、真っ直ぐ前を見据えていた。
    ……きっとシロも限界なはずだ。
    それでも、僕の為に気丈に振舞ってくれてるのだろう。
    ……僕だって、頑張らないと!
    2人で協力して、必ず生きて帰るんだ!

    「……見えたぞ!あそこだ!」
    「……!」
    シロが指差す方向には、小さな洞窟があった。

    —————————

    「ここで待ってろ。
    すぐに戻るからよ」
    シロに支えられ、洞窟の奥まで辿り着くと隅に座らせられる。
    「シロ……」
    「絶対にここを動くんじゃねえぞ。
    ……いいな?」
    「……うん。必ず戻ってきてよ?」
    不安そうに見つめる僕を見て、屈んで目線を合わせるシロ。
    琥珀色の瞳が優しく細められ、震える肩にそっと手を添えられる。

    「——んなシケた面すんなよ。
    俺は絶対に死なねえ。信じろよ、相棒!」

    肩を掴む手に力が込められ、真剣な眼差しで告げるシロ。
    その言葉を聞いて、不思議と震えが止まる。

    「……わかった。
    絶対に2人で生きて帰ろう!」
    「おう!言われるまでもねーな!」
    安心させるように、力強く笑うシロ。

    「うし、行ってくるぜ」
    そう言い残すと、シロは吹雪の中へと姿を消した。

    ——————————

    不安を押し殺し、シロの帰りを待つ。
    ……どれくらい時間が経っただろうか。

    ——寒い……暗い。
    シロがいなくなり、身体の芯まで凍るような寒気を自覚する。

    ——眠い。
    少しだけ……眠っても……大丈夫かな?

    疲れ切った身体は休息を求めており、瞼が重くなっていく。
    そして、抗う事なくゆっくりと目を閉じた。


    ——— ——…………。
    ——…………


    「……ルク……!……しろ!
    クソッ……んなに冷え……ッ……!
    死ぬ……ねえぞッ!」


    意識を失う寸前、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。

    —————————

    ——暖かい。
    身体が、温かい何かに包まれている。
    柔らかい感触と、程よい弾力。
    ……ベッド?そんなはずはない。
    僕は今、極寒の地にいるはずだ。

    ——そうだ!寝てる場合じゃない!
    早く起きないと……!!
    身じろぎするが、何かに強く抱きしめられているようで動けない。
    ゆっくり目を開けると、視界いっぱいに広がる白。

    「——やっと起きたかよ」
    顔を上げると、呆れたような、安心しているような表情を浮かべるシロがいた。

    「……あれ???」
    「あれ?じゃ、ねーんだよなぁ……」

    僕の身体を包み込むようにして、抱き抱えているシロが呆れた様子で呟く。

    「……シロ?」
    「おう」
    「戻って来てくれたんだ……」
    「約束、したからな」
    「…………」
    「…………」

    焚き火の爆ぜる音だけが響く。

    「えっと……これ、ちょっと恥ずかしいんだけど……?」
    「…………」
    「うわっ!?」

    急に身体を持ち上げられ、胸元に引き寄せられる。
    「ちょっ…… シロ??」

    シロは何も言わず、ギュッと強く抱きしめてくる。
    「シロ、ちょ、苦し…ッ!」
    胸元を叩くと腕の力が緩み、ようやくシロが口を開く。

    「お前、死にかけてたんだぞ」
    「……うん」
    「身体の芯まで冷えきっちまって……。
    だからよ——」
    「——こうするのが最善だと思っただけだ。
    ……わかったらちょっと黙ってろ」

    ぶっきらぼうにそう言い、再び僕を強く抱きしめるシロの腕には、『最善だから』以外の意味が込められているような気がしてならなかった。

    「……ありがとう、シロ。
    ……でも、ちょっと臭いかも……?」
    「うるせえ……我慢しろ」
    そう言って、シロは僕の頭を軽く小突いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works