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    アヤトキ

    @zub_time の壁打ち。ぴくしぶに載せるまでもない短文とか落書きとかをここに投げます。

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    アヤトキ

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    一夜の過ち五と七の冒頭。後半はR-18のはず。今月中に完成させたい。(2021/09/18)

    無礼講目が覚めた。
    自分と目が合った。なぜか天井に鏡があったので。
    鏡の中の五条は馬鹿でかいベッドに寝ていた。否、マットレスから僅かに脚がはみ出している。そうそう僕って日本人として規格外のサイズだからどこ泊まってもこんなんなっちゃうんだよね~、などと現実逃避をしつつ。その隣に写る、明らかに人が入っているだろうシーツの膨らみ。それについてはとりあえず見なかったことにした。
    目元をわずかに腫らした己の顔から視線を外して辺りを見渡すと、安っぽいカーテン。小さなテーブル。テレビ。その下の小さな自動販売機。そこで売られているどぎついパッケージのアダルトグッズ。鏡の時点で薄々気づいていたことだが、今いるここはラブホテルだった。
    まあつまり、やらかしたということだ。ここ最近は特定の相手もいなかったので、恐らくワンナイトとかいうやつだ。そしてその愚かな事実を裏付けるように衣服が点々と床に散らばっていた。五条のいつもの黒ずくめと、それから、ペールグレーの、……。

    そういえば尻が痛い。腰も股関節も痛い。
    一度落ち着こう。息を深く、吸って、吐いて。

    深呼吸を何度も繰り返し覚悟をやっと決めてから、そっと、そうっと安物のシーツをめくると、見覚えのある金髪の男が裸ですやすや寝息を立てていた。思わずシーツを元に戻した。再度ゆっくりシーツを持ち上げても、七海はまだ眠っていた。
    普段きっちりと七三に整えられている髪はゆるく下りていて、筋肉質な首から肩にかけてはおびただしい数のキスマーク、爪痕、極めつけに歯形。情事のあとというよりいっそ大型の獣にでも襲われたかのようだった。
    これを、五条が?
    そして、気づかないふりをしていたかったがもう限界だった。つまり五条もすっぱだかだった。自身の身体も似たような状態だ。

    「ええぇ、オイオイ……」

    もしかして、10年近い付き合いのある後輩の、男と、やっちゃった? セックス、しちゃった?
    確かに七海は五条にとってかわいい後輩だ。五条に対してだけは生意気だが、クソがつくほど真面目かつ誠実な男を五条は好ましく思っていた。ただそれも人として、という前置きがあってこその話。何かの勢いでワンナイトラブしちゃってもいいかも、だなんて間違っても思ったことはない。
    というかまじで尻が痛い。腰が痛い。
    この世に生まれ落ちて二十余年、男のブツを突っ込める穴が己にあるなどということも意識せずに生きてきたが、ここに来て唐突に処女喪失してしまったらしい。
    この状況ですやすやと寝こけている小生意気な後輩に掘られて。

    「……え、マジで? マジでェ?」

    すると、配慮を忘れた五条の声にようやく男が身じろいだ。

    「……な、んですか……、うるさ、」

    そして灰がかった碧の瞳に五条を収めた途端、固まった。フリーズした。それはもう綺麗に。あまりに見事な硬直っぷりに、五条も置かれた状況を一瞬忘れて見入ってしまった。
    そして、ラブホテルの一室、ベッドの上ですっぱだかの男二人の間に沈黙が流れる。
    暫くの間かちこちぐるぐると型落ちのパソコンみたいに状況把握に努めていた七海は、うん、と緩慢に頷いて、のっそりと身を起こした。地の底を這うような低く長い溜め息をひとつ。それから、雰囲気に惹かれて入った喫茶店のコーヒーがクソマズかったときのように五条を睨みつけた。

    「……忘れましょう」
    「うんソウダネじゃっ!!」

    叫ぶように告げて勢いよくベッドから飛び起きた五条は、その勢いのままべしゃ、と床に倒れ込んだ。すっぱだかで。脚に力が入らなかったのだ。
    えっなんで立てないのアッ本来入れるところじゃないとこにちんこが入ってた(推定)んだもんねそりゃあ腰も抜けるかえっまじケツにちんこってホントに入るんだぁ(推定)ウワァあいつ絶対デカチンじゃん高専の時風呂で見たもん(うろ覚え)よく無事だったな僕の尻まあでも僕なら反転術式で治せるからなんとかなるかそうじゃん反転術式使お。

    「……大丈夫ですか?」
    「アッハハハ大丈夫大丈夫僕最強だから!」

    単なる事実として繰り返し発してきたその言葉も、今だけはグミに付いてくるオブラートよりも薄っぺらだ。何が大丈夫なんだろう。最強だからなんなんだろう。五条が知りたいくらいだった。
    思考だけが忙しない空っぽの頭のまま、反転術式をぎゅるんぎゅるんと回して足腰を無理矢理立たせ、床の衣服を一枚一枚拾っては身につけていく。七海のものはベッドに投げてやった。

    「あ、それ……」

    背後の戸惑った声にふと思い立ち、身につけたスラックスの尻ポケットからブラックカードを取り出し、それも七海に投げつけた。

    「アッ支払いコレでよろしく!! じゃあね!!!!」

    そう回数を重ねた訳でもないが、七海と食事に行くときは大抵、先輩風を大いに吹かせた五条が支払っていたから。その流れを身体が覚えていた。

    そうして五条は薄汚れたラブホテルを後にし、授業のため慌ただしく高専へと向かった。もうすぐ始業時刻だった。
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