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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    sayuta38

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    鍾魈短文「あのポーズ」
    猫の影絵になるので遊ぶしょしょ

    #鍾魈
    Zhongxiao

    あのポーズ「魈」
    「はい、ここに」
     鍾離に呼び出され、魈は直ぐ様そこへ駆けつけた。降り立った先は瑶光の浜のワープポイント付近であり、鍾離は腕を組んで立っていた。日が昇り、煌めく朝日が眩しい。今日は良く晴れた日なのだな。と鍾離のキラキラ光る背中を見ながら魈は思った。
    「旅人に写真機を借りたのだが、少々撮りたいポーズがあってな。お前の力を借りたくて呼び出してしまった。急にすまない」
     わざわざ呼び出されたくらいなのでどんな一大事な急用かと思ったのだが、それ程大事ではなさそうで魈は安心した。被写体になるのは少し遠慮願いたいところではあるが、鍾離を撮る。ということであれば、なんとか任務は遂行できそうではあると思った。
    「……鍾離様を撮れば良いのでしょうか?」
    「そうだな……まずは魈から撮りたいのだが、駄目だろうか?」
    「我の……ですか」
    「そうだ。撮りたいのは正面から撮るのではなく、後ろ姿なんだが」
    「なるほど……」
     ひとまず引き受けてみようと魈は了承した。日が出ているうちに終わらせたいと鍾離が言うので、早速とくるりと回り鍾離に背を向ける。
    「そのまましゃがんでくれ。そうだ。その後腕をあげて、中三本だけ指を立てて、交差してくれないか」
    「? え、ええと……」
     鍾離は何を言っているのだろう。魈には鍾離の説明だけでは撮って欲しいポーズとやらが全くもって見当がつかなかった。旅人にピースを求められた時と同じような難解さを感じる。腕をあげ……えぇと、なんであったか。
    「すみません。これで合っているのでしょうか……」
    「もう少し腕をあげてくれ。ああ、そうだ。あと、手はもう少しだけ交差してもらえると助かる。そうだ。肘から少し出る程度でいい」
    「は、はい」
    「そのまま少し静止していてくれ」
     そこまで魈は身体が硬い訳ではないが、中々に不可解なポーズであった。そのうえ静止していろと言うことで、じっと息を潜めて砂浜を見つめ、同じポーズを取り続ける。パシャ。と後ろから音がしたので、ポーズ自体は合っているのだろう。パシャ。パシャ。数秒ごとにシャッターを切る音がする。一体何枚撮るつもりなのだろう。うむ。いいな。と鍾離の声がするが、何がどういいのか少しばかり教えて欲しいと思ってしまった。
    「よし。いい写真が撮れた。感謝する」
    「はい。鍾離様が満足されたのであれば……良かったです」
    「では、次は俺の番だ。ポーズを取るので、後ろから影が映るように撮って欲しい」
    「わかりました」
     鍾離も同じように砂浜の上にしゃがみ込み、外套が砂まみれになるのも構わず先ほどの魈と同じようなポーズを撮っている。よくわからないが、指定されるままに魈は鍾離の背後ややや斜め後ろからシャッターを切っていった。
    「……おそらく、撮れたかと」
    「感謝する。これから現像しようと思うが、お前も見にくるか?」
    「えぇと……では、折角なのでお供いたします」
     そのまま鍾離と並んで璃月港まで帰り、写真を現像する所を見せてもらった。これがお前の写真だ。と見せてもらったそれは、言いにくいが少し間抜けなポーズをしていると思った。
    「これは……一体……」
    「影を見てみるといい」
    「影……?」
    「猫の形をしていると思わないか」
    「……な、なるほど……」
     確かに、言われてみれば、肘の部分が耳に、指の部分がヒゲに、しゃがんだ身体の形が胴体に……なるほど、猫に見えてきた。これを鍾離は撮影したかったのか。
    「これが俺の写真だ」
     魈が撮影した鍾離の写真を見せられる。そう説明してくれれば、もっとその影が映るように写真を撮ったものだが、鍾離の後ろ姿を撮ることに注力し過ぎていて、猫の形が斜めになってしまっている。
    「近頃璃月で流行っているようで、ルルと飛、モンに教えてもらったんだ」
    「さようでしたか」
    「魈の写真は俺が持っていたいのだが、俺の写真はお前に渡そう。部屋に飾るといい」
    「しょ、鍾離様の写真を部屋になど……」
    「なんだ? 他に見られて困る者でも来るのか?」
    「いえ、それは……ありませんが……」
     滅相もない。という意味合いだったのだが、鍾離には違う意味に取られてしまった。鍾離も他の者に魈の写真を見せるのだろうか。凡人の目に晒されるのは少し勘弁願いたいところでもある。
    「鍾離様は、その写真を……例えば、堂主にお見せになったりするのでしょうか……?」
    「この写真は俺しか見ない。例え旅人であっても見せることはないだろう」
     即答レベルで嘘偽りのない石珀色の瞳が真っ直ぐ伝えてくる。少しでも疑ってしまった自分が情けなかった。
    「そうでしたか。それは安心いたしました」
    「……見せても良いのならば、見せて回るのだが……」
    「え?」
    「いや、なんでもない。いい出来だ」
     その後は茶を飲み近況を報告した後、写真を置きに望舒旅館へ戻った。この部屋には写真立てがない。釘などはすぐに調達できると思うが、鍾離の写真に穴を開ける訳にもいかない。
    「……」
     ほとんど物が入っていない棚の引き出しの中へ写真をしまった。ここは連理鎮心散をしまっている所であり、旅館の者にも手をつけなくて良いと伝えている場所だ。たまに開けて鍾離の姿を見る分にはうってつけの場所である。
     そう思って部屋に帰る度にこっそりと引き出しを開けては写真を眺めていたのだが、後日鍾離が部屋に訪れた際に写真が飾られていなかったことで多少のショックを受けていることは、まだ知る由もない魈なのであった。
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