ダンムル(R)/書きたいところだけ書いたその日抽出されたばかりの彼は、ひどく不安定だった。
大きな鎧に条件付きのヘルメット。サイチームの所属である、とそう名乗った。
言葉を交わしてR社の凄惨な事実に驚いたのも束の間、すぐに実戦での試用が始まる。
ウサギのヒースクリフが息巻く後方で離れた敵を睨んだまま、肝心の彼は動かない。
「………………」
<ムルソー?>
よく見ればそびえるような肩は小刻みに震えている。
<どうしたの。怖い?>
「…………失敗は許されません。成果を出せなければ、また……」
経験してきた孵化場での地獄は、ただ一人となった今もなお彼を苛み付き纏っている。
肌のところに直接触れて安心させてあげられたらよかったのに。ダンテは背中に隠れため息をついた。もともと体格の良い彼がさらに大きなスーツを着ているものだから、手を伸ばしたってあの黒髪には届かない。
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