嗚呼、愛しき工房の日々5書類の束から何枚かめくり、他の筆跡で書かれたものが出てくれば目を通す。
不足への加筆、押し忘れの判を押し、誤りの訂正。
自分のいない間苦労しながら必要最低限だけ精一杯どうにかしたであろう書類群。位置や順番すら適切ではないそれらを馴染んだ形にもどすのにムルソーはかなりの時間を要していた。
復帰してからもう一月あまりが経つが、ようやくそこまで緊急性のない当時の書類にまで到達したところだった。
あちらこちらに貼られた薄赤の付箋に指を滑らせる。
『ここわからなかった! ゴメン!』
担当したのは誰、記入や期日はいつ。そんなメモの合間に紛れている、彼からのメッセージ。
無意識に笑みを浮かべ、一段落ついたところでムルソーは気だるげに席を立つ。
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