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    utusetu4545

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    弊里のウツハン♂の年越しお話。くっついてません。初小説なので拙い点はどうかご容赦ください…。

    #ウツハン♂

    よいお年を年の瀬が迫るカムラの里では、みなあわただしく新年を迎える準備に奔走していた。
    里のハンターもまた然り。ハンター業は緊急の場合を除き、ハンターやハンターギルドに属する者たちは年末年始は体を休めるよう、里長とギルドの世話役であるゴコクからお達しが出ていたのであった。
    そして、里の英雄も例外ではなく。
    今やナルハタタヒメを討ち、百竜夜行を終焉へと導いた英雄とうたわれたハンターの一人。セツもまた自宅のルームサービスやオトモと共に大掃除や年始への準備に明け暮れていた。
    神棚と、すす払い、床掃除と棚の磨きは終わったし、仕込んである黒豆はあと少し味がなじむまで時間がかかりそうだ。田作りはもう終わったから、あとは昆布締めにとりかかって…と算段をつけていたとき、
    はら、と白い何かが視界を過った。
    ああ、雪が降っているのか。どおりで寒いわけだ。今年は少し遅かったな。
    などとぼんやり考えていたらはたと思うのは、かの人のこと。
    教官、そういえば今日は里の周りを見て回って、モンスターに目立った動きがないか見て帰ってくる、なんて言っていたな。
    こんなに寒い日だとさぞ冷え込むだろう、と雪を見上げ思う。
    そうだ、何か温かい飲み物を用意して待っていようかな。報告もあるだろうから、あまり時間をかけないように。
    家に確か生姜があったはず、蜂蜜をたくさん保管しているから、生姜蜂蜜湯を持っていったらいいかな。
    そうと決まったら早く家のこと片づけないと。
    段取りを決めてよし、と立ち上がった。

    今日はやけに冷えると思っていたらいつの間にか雪が降っていた。
    後進の教育に加え里の警護を任されている里のツワモノ、ウツシは里の周りの哨戒任務を終え、身体を震わせつつギルドに滑り込んだ。
    「おお、ウツシよ。ご苦労だったな」
    里長からの労いもそこそこに、今日はもう休めと指示を受け、帰路につこうとした時だった。
    「教官、お疲れ様です」
    「やあ愛弟子!君もお疲れ様!こんな寒いところでどうしたの?」
    ギルドの出口で愛弟子のセツが立っていた。手には湯気の立っているものを持っているらしい。
    「あの、これ。生姜湯です。冷えると思って」
    「ああ、わざわざ俺のために?ありがとう!君は優しいなあ」
    ぐい、と飲んでみると温かいものが喉を通り、じわりと身体の奥から熱がわきあがってきた。口当たりが優しいのは蜂蜜のせいか。
    「とても美味しかったよ、ありがとう」
    「お口に合えば幸いです」
    「もちろん!だって君の料理はみんな美味しいじゃないか。まして寒いなか待っててくれた子が用意してくれたんだもの、美味しくないわけがない!」
    そういってやると、愛弟子の白磁の肌がほんのりと赤く染まった。この子はいわゆるアルビノ、という体質らしく、人よりも肌や髪の色が白い。
    故に、顔を上気させるとすぐに肌に現れるのだそうだ。
    「あ、ありがとうございます…。あの、これからもうお帰りですか」
    「うん、そうだよ。セツは休みだよね、もう年始の準備は終わったかい?」
    「はい。ルームサービスさんやオトモのみんなに助けてもらって、ですけど」
    「はは、ハンター業は忙しいからね、なかなか家のことまでは手が回らないさ」
    ふふ、と笑って肩を揺らす愛弟子を見やる。自分よりも一回り小さい体をしているが、着物の陰から覗く無数の傷跡が、彼が激戦をくぐりぬけたハンターであることを示している。
    この穏やかな子が、俺の教育を受け、ハンターになり、里の危機を救ったのだ、とそう思うと万感の思いが胸に迫った。
    「教官?いかがされましたか」
    不意に立ち止まったこちらを心配してセツが駆け寄ってきた。
    「ああいや、なんでもないよ。本当に大きくなったな、と思ってね」
    頭を撫でてそういうと、照れくさそうにセツは眼をふせた。
    「君のおかげで、今年も里は無事に年を越せるんだよ。本当に、よく頑張ったね」
    「いえ、そんな…。俺だけの力じゃ、ないです」
    「もちろん里のみんなも頑張った。けれど、元凶を討ったのは間違いなく君の手で成し遂げたことだよ。もっと胸を張っていいんだよ」
    頬を撫でてやると、セツが目を細めてこちらを見上げてきた。
    「教官の、ご指導のたまものです」
    まだ幼さのぬけきらないまろい頬。ほんのりと上気した顔。ああ、やめてくれ。そんな顔をしないで。勘違いしてしまいそうになる。
    「ふふ、君は謙虚だなあ。周りを大切にできるのは君の素晴らしいところだよ」
    「けれど、俺はもっと君は君自身を大事にしてほしいな。俺の大事な、愛弟子なのだからね」
    そう、この子は愛弟子。俺は教官。自分に言い聞かせるように言った。道を踏み外してはいけない。この子には将来があるのだから。
    「教官」
    「なんだい?」
    一瞬、セツの目に寂しさの色があったように見えたのは、俺の気のせいだろうか。
    「来年もまた、こうして一緒に、年の瀬を過ごせるでしょうか」
    愛弟子からの問いに目を細めて答えた。
    「ああ、もちろん!」
    己の煩悩を打ち消すようにわざと元気よく大きな声で答えてやると、愛弟子は笑った。
    「はい、来年も、よろしくおねがいします」
    「うん、こちらこそ、よろしくね」
    良いお年を、と挨拶をして愛弟子と別れた。しばらく自宅に帰るまで、俺は手に残った頬に触れた感触を、いまだ忘れられずにいた。
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