平安時代AU 第2話「大変ですっ!主上がこちらに向かっていらっしゃいます」
女官達が集まり、次の宮中行事の衣装を準備していた時だ。まだ年若い女官がばたばたと慌てて入ってきた。常なら大きな足音をさせてはしたないと叱るだろう古株の女官達も、主上のお出ましとあっては目を白黒させている。
すぐに衣装を片付けるように指示が出たが、片づけ終わる間もなく主上が入室した。
「忙しいところに急に来てしまって悪かったね。」
「主上、とんでもないことでございます。御見苦しいところをお見せしてしまいました、お許しください。」
女官達がひれ伏していると、皆顔をあげるようにと言われた。
主上を間近で見ることなどそうないことであったため、皆が好奇心を抑えられずにそろそろと顔を上げる。後方に控えていた江澄も前の女官達にならって顔をあげると、驚いたことに主上がこちらをじっと見ていた。
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