[23/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 茶色くなってしまった葉を取り除く。自室の卓、エースから貰ったささやかな花束は、徐々に細く、小さくなってきた。この仮初めの花瓶もじきに、ただのグラスへと戻らざるを得ない。
傍らに長いこと置かれていた、細いリボンにアリスは手を伸ばす。丸まっていたそれは、毛糸玉のように転がって、指先とグラスに浮く花との間に橋を架けた。
怖くなったかという彼の問い掛けに思いを馳せる。
会えない間に育ってしまった。
離れ難いと思う存在が出来てしまった。
忘れたくないと思う人が、出来てしまった
エースのふるった剣よりも、アリスは今。
その本人を忘れることが、何よりも怖いと思っている。
萎れた紫の花に口付け、アリスは凛とした面持ちで部屋を後にした。