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    Hino

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    Hino

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    🌸大尉をお迎えに行く話

    この船を降りる事になったら、2人でどこかに行きましょう

    そんな日が来ると思ってんのか

    来ますよ、きっと

    俺はここから出れるなんて思ってないんでね....もしそんな日が来るのなら、お前が責任を持って迎えにこいよ

    ええ、約束です
    ゾルタン大尉



    昔の夢、を見ていたのだろうか。それともこれは走馬灯というやつなのかもしれない。
    半壊したMSからはひっきりなしにアラートが鳴り響く。
    私は...大尉のIIネオジオングの随伴としてグルトップから出撃した、はずだ。
    それから、連邦の軍隊、ガンダムと交戦....あとはなんだったか。

    霞がかった思考のまま、メインモニターを除く。
    あれは、大尉のシナンジュ・スタインと対峙しているのはフェネクス...
    ...待って、何で大尉はネオジオングを放棄している?
    フェネクスが突撃していくのが見えた。
    「ゾルタン大尉!!」
    異音がする機体を無理矢理動かして。
    大尉と不死鳥の間に割って入る。
    途端に響く機体がひしゃげる音。
    視界が真っ暗になって。



    死ねば溶け合えるんだろう?



    大尉の、声が、聞こえる




    目を開ければ見知らぬ風景、凪いだ海がそこにはあった
    どこか寂しくも暖かい、たぶん誰かの思い出なのだろう
    ぽつぽつと何人かの人影が目に入る
    自然と私は彼を探し始めた



    視界の隅に映った、少年と白衣の大人が一団から離れていく。
    振り返った少年と目があった。
    知らない...いや、私は知ってる。
    小さくなりゆく背中を見て私は


    迎えにいかなきゃ。


    そう決めた時には身体は走り出していた。

    近づいてみようとすると存外に距離があり、追いつく頃にはすっかり息が上がっていた。
    少年の手を握れば、驚いたように彼がこちらに体を向けた。
    上がった息を深呼吸で無理矢理押さえ込む。

    「お迎えに来ました」
    「...僕には帰る場所なんてないんだよ」

    諦観を孕んだ瞳が私を見つめる。
    この人が見せるこの顔が私にとっては何よりも辛かった。
    だから見捨てる...1人にはしておけないのだ。


    「帰る場所がないなら私が貴方の居場所になりますから」


    「ずっと一緒にいます、ゾルタン」


    視界が涙で滲む。


    「馬鹿だよな、お前。俺なんかと心中しちまうなんて」

    返ってきた声は先程の少年ではなく、聴き慣れたあの声音。

    「約束しましたもの」

    添えられた手が涙を拭う。
    迎えにきた方がガキみたいに泣いてんじゃねぇよ、と大尉は笑う。



    「さて、俺達は何処に行こうかね?」
    「そうですね、じゃあ2人きりでデートでもしましょうよ」
    「ははっ、言い出した割には全然考えてねーよかよ」
    「...今から考えますぅ!」


    他愛のない会話をしながらお互いの手を握る。
    もう離さない。
    私がこの人を暗い場所から陽だまりの中へ連れていくのだから。

    2人は静かに歩み出した。
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