【hrak】上耳が電車旅 座席が小刻みに揺れる振動を感じて、耳郎は浅い眠りから覚醒した。肩と腰、それに背中の筋肉が強張っている。ぐ、と背伸びをして伸ばそうとしたところで隣に座る人物に腕がぶつかり、今いる場所が電車の中だったことを思い出した。
「うー……」
「ご、ごめん、起こした?」
「んー……、うーん……」
隣の上鳴も夢の中だったようで、起こしてしまったかもと慌てて謝罪する。しかし当の上鳴は小さく呻いただけで、膝に乗せた大きなリュックを抱え直してまた眠りについてしまった。
大好きなバンドを追いかけて、片道五時間の電車旅。近場の会場でのライブは抽選に外れてしまったが、上鳴が地方公演のチケットを当ててくれたときは飛び上がって喜んだ。初めて行く街、初めて行くライブハウス。お気に入りのアーティストのライブに参戦して音楽に身も心も預けるのは、ヒーローを目指し鍛錬する日々の中で絶好のリフレッシュ方法だ。
2045