その目の中に、夏の雨が② 尾形は上機嫌だった。パンパンになって一か月。すっかり生活は変わった。相変わらず暮らしているのは、はしけ船の上に作られたバラックだが、それでも三畳はある部屋を借りられるようになった。三度の飯にもありつけている。身売りをはじめた当初は、男などさして客が付かないだろうと思っていた。だが、不思議と尾形を買いたがる男は多かった。巡りのいい日などは、三人も客が付く。
その真っ白い蝋みたいな肌がいいんだ、とある男が言っていた。尾形にはよくわからぬ感覚だったが、どうも自分は男というものを惹きつけるらしい。
白い肌は母に似たものだった。死体のようで薄気味が悪いと陰口をたたかれることもあったか、こうなった今としては、都合のいい肌だったと言える。
11527