クラシカルメイドのくすぶり 校内図でも持っているのかと思うほど淀み無い動きで空き教室にたどり着いた彼は入るなり連れて来ていたこちらを机に押し付けた。ネットで大量に買った衣装だから生地自体は薄い。尻にひやりと走る嫌な感覚を逃がそうと意識するあまり、ふくらはぎに男の手が伸びていることは理解していなかった。人肌の感触に気づいた時にはもう遅く、
「……え、ま、待って……!」
スカートを押さえる間もなく片足がぐいと持ち上げられる。慌てている隙に手は太腿裏へ、膝下は解放されたが意味はない。明らかに見られたくない場所が固定され、男の眼前に晒されているのだから。
「嫌だ、愛抱夢」
「……あまり大きな声を出さない方がいい。ほら」
聞こえてしまうよ、と促され耳を澄ますと確かに廊下の方から人の声がする。焦った頭ではそれが近くで聞こえるのか、本当に自分が声を出したら彼らに届いてしまうのかなんて判断できなくて咄嗟に口を閉じた。
機嫌をよくした愛抱夢の手が無遠慮に太腿から付け根を辿る。ほとんど座っていただけの冷えた身体には彼の指は熱すぎて、遊ばれるだけでも少しつらい。
「っ、ん……」
せめてと膝を曲げれば彼がいかにも悲しそうに囁いた。
「どうして?恥ずかしがることはない。慣れてるだろう」
指先が布地の下に入り込んでくる。
「僕はこの下着だって知ってる、剥いだ先も……まあ今は何もしないけど」
「……」
してるだろと言いたいけど口を開いた瞬間を狙われてる気もするので堪えた。残念、と肩を落とすのを見るに正解だったようだ。
「怒らないで。君があんまり注目されていたのが気に食わなかっただけなんだ」
愛抱夢が腰を落とした。床に跪くと、
「これで我慢するから……」
先程まで触れられていた箇所に息がかかる。思わず身構えた身体に、指よりもずっと熱いものが触れた。続けてほんのわずかな痛み。
「……ッ」
律儀にも脳が同じ事をされた時の記憶を呼び覚ます。自分の身は何も纏っておらず思考は、ただ気持ちいいと。
忘れろ忘れろと口に出さず唱える間に立たされた。空き教室から出るとそのまま手早くエプロンの裾など整えられる。窓ガラスに映るここへ来る前と何ら変わらない姿、それにそっと愛抱夢の手が這った。
「いいね。怖いくらいに清楚だ」
布越しに撫でられた場所の意味を自分はよく知っている。
「きっと誰も気づかない……」
想像すれば直に触れられるより強烈なものがぞわりと腰を抜けた。再び口に出さず唱える。忘れろ、忘れろ。