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    20220406 付き合ってる二人と桜と芽吹きと実感
    自カプには好きなのかなと好きなのかも…とうわー好きだが全部ある 最高

    ##明るい
    ##全年齢

    ほころび、じんわり 帰る途中大きな桜の木を見かけた。
     ほぼ満開のそれを撮り“咲いてた”と言葉を添えて送ったのが数時間前。
    「……咲いてたから、なに?」
     夕食で使った皿をすすぎながら気づいたのがさっき。
     そして今は机の上置いたスマホをひたすら見つめている。
     何分経とうと画面は暗いまま。一応画面をつけてみても当たり前に通知は〇。ほっとしたような不安が強まったような、ううんやっぱりほっと寄りな気がする。ずっとこのままならいいのにと思っていないこともないから。
     咲いていたから何なのか。考えても答えは浮かばず、どうやら自分はただなんとなく咲いていたから咲いていたと伝えたらしい。日記か。あの人の困惑顔が想像できる。
     いっそ消して。思いながら指はアプリへ全く近付こうとしない。消せば消したで跡が残る。文面だろうと巧みに訊かれたらあっさり答えてしまうだろう、結果は一緒だ。なにより開いたらハッキリしてしまう。読まれたか、読まれていないか。
     願望込みで今のところは読まれていないと思う。けれど通知を見逃した可能性もあるし、そうでないとしても結局いつかは読まれるのだ。
     どうだろう。やさしい感想が来るかもしれない。または少し間を置いてから何も無かったみたいに別の話をふられるかも。どちらにせよ気まずくなりそうだ。それになんだか、さみしい。
    「さみしい」
     いきなり現れた思いもよらない言葉を口に出した瞬間、ぱっと目の前の画面が明るくなった。
     ある意味でよすぎるタイミングに確認する前から脳が判断を下す。こんな偶然を起こしてくる相手は一人しかいない。
     まずは答え合わせのように名前を。次は『写真を送信しました』の文字を。
     それから隣の小さなサムネイルを見て、そして何を考えるより早くアプリを開いていた。
     数秒前より大きくなった写真には笑顔のひとが一人。車内で撮ったのか背後に窓が写っている。その奥に見えるのは。
     分からないはずがない。今日見たばかりだ。
     写真の下には短いメッセージがふたつ続いている。“見たよ”と“ここにする?”。意味もなく交互に何度も読んだ。その度ぽたりぽたりと落ちる何かに胸の内が埋められていくのを感じながら。
     ああ思い出した。冬前のはなしだ。偶然会って話したときのこと。寒そうな木の群れを指して彼が言った。三月も経てばあれらに花が咲くからそしたら二人で花見でもしようかと。悩む間に話題は移っていて、約束もなく、だからかあの短い会話のことは今の今まで忘れていた。けれど彼は違ったようだ。それに自分も。きっと心の片隅には残っていたのだ。そうでなければ最近人気のない場所に咲く桜ばかり気にしていた、その説明がつかない。
     泣いている訳でもないのにことばふたつが揺れて見える。返事がしたいけど文字だけでうまく伝えられるかな。思えば丁度よく鳴りだす着信音。ほんとうになんてタイミングのよさだろう。息を吐いてスマホを手に取った。どうかと穏やかな声が尋ねてくる。
    「うん。俺たぶん愛抱夢が好きなんだけど」
    『知っている』と彼は言い、それから『多分では無く君は僕が好きだよ』といつものように正した。分かられている。自分でも分かっている。ちゃんと好きだ。
    「でも今、俺」
     どうしよう。おかしいな。
    「あなたのこと好きになりそう……」
    『それは良い。どんどんなろう』
     無言でいれば嫌かと問われた。
    「いやじゃないけど、少し怖い」
     意識していないと声がうわずりそう。心臓がほんのり速くて頬が微妙に火照っている。桜のこと、偶然か知ってたのかわざわざ探していたのか訊きたい反面心からどうでもいい。今すぐ通話を切りたい。けどこのまま朝まで話していたい。
     暗いスマホを見つめていたときより頭のなかはずっと雑多でめちゃめちゃなのに嫌ではない、むしろ何故か嬉しかったりするのは自分でも見過ごしていた自分自身をそっと示してくれたひとりが居るからだけど、そう思うだけで簡単に嬉しくなってしまうのは困る。これが好きという気持ちだとして、もしもっと大きくなってしかもそのまま戻らなくなったりでもしたら。
    「愛抱夢がいないとだめになるかも」
    『僕は歓迎』
    「俺がやだ」
     被せて言えば『いいのに』と笑い声。よくない。
    『怖いなら駄目になる前に教えてあげる。だからもっと僕を好きになって。僕が君を愛しているくらい』
     不思議な言い方をすると思った。けどすぐ不思議でもなんでもないことに気づいて、そして次の瞬間スマホを置いて机に突っ伏していた。
    『……ランガくん? 今の音は』
     痛いほど熱い耳に彼の声が入ってくる。気にされているらしい。それはされるだろう。だってこの人。自分で思ったのにその先は耐えられず、無理やり止めて目を閉じて、うわあ、と心のなかで呟いた。
     気づいてしまった。愛されている。
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