おまけ② シュトーレン坊やがドイツに来ると決まった。
甘いもの好きの坊やのためにシュトレーンを作るかと思い立つ。
実は料理は嫌いではない。
凝り性の己の性分を知っているからむやみに手を出さないだけで、旨い酒があればそれに合う旨いツマミを作ったりもした。
だが、パンや菓子をいった類は作ったことがなかった。
12月になりレシピを参考に、まずはドライフルーツの下準備を始める。
市販のものはどうも甘すぎて食指が動かないが、自分で作るとなれば別だ俺と坊やの趣向のギリギリのラインで甘いが甘すぎないところを目指す。
ただまあ、ドライフルーツをラム酒漬けは多めに入れよう。
風味は大事だろう。
次の日は生地を作る、思ったよりも手順が多いが基本混ぜるだけ分量さえ間違わなければ俺にも出来そうだった。
ベンチタイムを挟みつつ生地を発酵させていく。
途中風味付けのために昨日余ったラム酒を少し加えたが問題はなさそうだった。
生地を休ませつつ、ドライフルーツを加えてさらに捏ねて、ようやく馴染んできたところで2回目のベンチタイムをおく間に、坊やからのリモート通話が入った。
他愛もない会話をしているうちに、ちょうど良い時間がたっていた。
通話を切るとオーブンを温めて生地を焼く。
様子をみながら1時間程度で焼きあがったので、急いで溶かしバターをたっぷりと塗り粉砂糖をふりかければ完成ということだ。
混ぜて捏ねて焼くだけなので失敗はなかった…はず。
坊やが来る頃には食べごろになるはずだと。
アルミホイルとラップで厳重に包装してから冷暗所に保管する。
ただ、坊やが帰ったあとに存在を思い出すことになるなんてこの日の俺は知る由もなかった。