燻っていた火種が燃え上がり、街に広がるのは一瞬のことだった。
それから数日。私は、どうすればこうならずに済んだのだろうかと、そればかり考えている。
その日、マイクが指定した"約束の場所"は、人通りのほとんどない裏路地の一角だった。
街は、日が高い時間にもかかわらず静まり返っている。
頬を撫でる乾いた空気に、私の目元を覆う黒く薄い布の裾が僅かにはためく。
ここに辿り着くまでに人に会うことはなかった。正面の大通りも、そこに続く小道も、この辺り一帯が限りなく静かだった。もしかしたら昨日を最後に皆が私を置いてこの街を出たのではないかと、そんなことを考えてしまうくらいには。
しかし私は知っている。皆、静かに今日という日の終わりを待っているのだ。今日という天秤が自分にとって良い方に傾くことを願いながら、息を潜めているのだ。
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