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    tp0_g4

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    ランジク
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    10/23:ミステリーフレーバー とある島に停泊していた時のこと。シェロカルテがハロウィンで売り出すための大量のお菓子をグランサイファーに持ち込んできた。店に並べる前に試食をして欲しいとのことだったので、留守番中だったルリアは、非番だったネネとその娘のヤエ。たまたま近くを通りかかったランスロットと、偶然出現したフェディエルに声をかけた。
     ランスロットは、自分は場違いなのではないかと数回確認をしたが、色んな人の意見が欲しいというシェロカルテに押し切られた為、試食会という名のちょっとしたお茶会にそのまま参加することになった。
     用意されたお菓子はどれも絶品なものが多かったが、中には悪戯用にと奇衒ったものもあったので様々な意見が飛び交った。
    「あれ?このお菓子、他の物とちょっと雰囲気が違いますね」
     積まれた沢山のお菓子の中からルリアが手に取ったものは、黒を中心とした模様の中に控えめな大きさでミステリーフレーバーと書かれた箱だった。
    「さすがルリアさん、お目が高いですね〜」
     目玉商品にしようと考えていたのか、シェロカルテは自信あり気に説明を始めた。
    「こちらはですね〜。何の味なのか予想したり、実際に食べてその味を当てて遊んでもらうことを目的に作られたお菓子なんですよ~」
    「わっ!めっちゃ楽しそうやん!」
    「はい!凄く楽しそうです!」
     ルリアとヤエは歓声を上げ、目をキラキラと輝かせてお菓子を見つめていた。
    「でも、結局何味かわからんかったらモヤモヤして終わってしまいそうやけど……?」
     ネネの言葉に対し、シェロカルテは心配無用といった声色で答える。
    「箱の裏側に答えが書いてあるんです〜。それと、ヒントもちゃんと用意されていますので〜」
     確かめてみると、箱の底にはヒントとして「初恋の味」と書かれていた。
    「"初恋"とは何かや!?」
     ヒトの番について常に知りたがっているフェディエルは、番に関連する言葉などは調べていたようで"恋"という言葉自体と何となくの意味は知っていたが、"初恋"という新たな単語を聞いた瞬間異常なまでに興味を示した。
     どういうものなのか、恋とはどう違うのかと、続々と質問を迫られて動揺するルリアの為に、ネネは助け舟を出す。
    「せやなぁ……恋との違いはそんなないとは思うんやけど。その人と話してるだけでめっちゃ嬉しくなったり、好きやって伝えたいけど今のままの関係でも幸せやから、それが壊れるのが怖いって不安になったりとか……まぁ、好きな人に対する感情が、どれもこれも生まれて初めて出てきたモンだったらそうかもしれんなぁ」
    「わかるわー!とにかく胸がきゅうううってしめ付けられることが多いんよな、初恋のほうが」
    「ヤエがその結論に至るんわ早すぎやろ!」
     賑やかな母娘のやり取りで場が和む中、真剣に聞いていたフェディエルはもうひとつの疑問を投げかける。
    「ふむ……では"初恋の味"とは何ぞよ?」
    「ああ、それは所謂、比喩ってやっちゃな。初恋は大体甘酸っぱいモンに喩えられるんや」
     初めて知る情報が出る度フェディエルの質問は増えていき、ネネが対応してくれている間にルリア達は早速ミステリーフレーバーのお菓子を食べてみることにした。
     確かに、そのお菓子はネネの言うとおり全体的に甘酸っぱいさで構成されていた。柑橘系のような、ほのかな爽やかさも感じ取れて、悪くない味だ。むしろかなり美味しい。
     口に入れたお菓子の味が色濃く残っている内に、ランスロットは何となく、自分にそういう思い出があったのだろうかと記憶を遡ってみた。
     今まで出会ってきた人達の顔を思い浮かべもいまいちピンと来なかったので、今度はネネ達が話していた内容に最も近い感情になったことがあるかどうかを探ることにする。
     まずは話しているだけで楽しいと思った人物の記憶を手繰り寄せる。他愛無い話、専門的な話、自分が知らなかった新たな知識を話した相手について、身内以外であれば、ある人が思い付く。その人に褒められた時と、自分のためにわざわざ時間を作って稽古をつけてくれた事実を知った時に溢れた感情は、確かに甘いと言って良いかもしれない。関係性が壊れることへの恐怖というのはどういう事だろうか。師として敬愛していた人物が次の日から裁くべき対象になることが近いのだろうか。それにはかなりの心当たりがある。しかし、あの感覚は言語化するなら酸味よりも苦味に近い気がする。だとしたら。
    「俺のは、この味とは違う気がするな……」
     声に出してしまった瞬間、その場が静まり返った事態にランスロットは少し遅れて気付いた。しまったと冷や汗が伝った直後、その場にいたほとんどの人物、ルリアでさえも詰め寄り始めた。フェディエルに至っては何かを完璧に勘違いしており、ランスロットに番がいる前提で話を進め、シェロカルテは何故か紙とペンまで用意していた。
     この騒動のせいで試食会は一時中断となり、どうにか難を逃れたランスロットは、少し風に当たろうと、疲弊した様子で甲板へ向かう。
     何故初恋の話をしていたのに、自分は頭の中でジークフリートを引き合いに出してしまったのか。それについてはどうにか隠し通せたとしても、目の前の疑問に集中し過ぎていた自分を、ランスロットはひたすらに憎んだ。
     廊下を歩いていると、丁度魔物の討伐依頼を終えて戻ってきたジークフリートと鉢合わせになってしまった。しどろもどろになりながらも咄嗟に、おかえりなさいと言い、ジークフリートもそれに答えてくれた。しかし、すぐに表情に憂わしげな色が加わる。
    「どうした?顔色が良くないみたいだが」
     真剣に自分の心配をしてくれているジークフリートと目が合うと、ランスロットは罪悪感のようでそうでない、言い表せない味のお菓子を食べたような感情に包まれた。
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