一人でいるとき、過去に思いを馳せたとき、気を抜けば誰にも言えない不安が顔を覗かせた。その度に自分なら為せると言い聞かせて、そう振舞ってきた。それで強がりが現実になる気がしたから。
だから、この日滑り落ちた言葉は予定外だった。
『誰か俺に上手く歩ける道をくれないかな』
初めて他人に弱音を吐いた。それも、生涯泣き言など言わないだろう藍忘機に。
口にしただけ気持ちが軽くなったような、ままならない現実にむしろ重くなったような気がした。
魏無羨の言葉を聞いた藍忘機は、彼を見詰めるだけで答えはくれなかった。それこそが答えだとわかっていた。
虚しくなるだけの泣き言はもう口にしない。
(困らせたかな。ごめん、もう言わないから)
「ありがとう」