我愛你今日はやけに参拝者が多いなと、謝憐は首を傾げる。
普段はひっそりとしている自分の道観は不思議と賑わい、しかも参拝者は若い男女が多く、祈願も恋愛成就に子孫繁栄。良縁祈願など色事への祈りばかりだ。
たしかに絶境鬼王と結ばれてから、縁結びやら恋愛運やら夫婦円満やら・・・そんな祈願が殊更増えているのは知っているが、なぜ今日に限ってこんなに賑わうのか?
道観に顔を出すと、祈りを終えた娘たちが気軽に声を掛けてくる。
「道長、こんにちは」
「みなさんお揃いで、今日は何かあるのかな?」
「今日は愛してるの日ですよ」
「?」
聞き慣れない日に、それはどの様な日なのかを尋ねてみた。
「5月20日は我愛你と響が似てるでしょ?」
「あぁ、それで愛してるの日なんだね」
「そうそう。だから、神様に恋愛成就をお願いしてから、彼に伝えるのよ」
「それは素晴らしい。皆さんにどうか神のご加護がありますように」
「ありがとう、道長さん」
彼女たちは頬を染めながら歩いていく。
謝憐は次々と参拝する人々の顔をみて、満足げに頷いたあと、少し頬を掻いた。
私は恋愛下手だから、うまくいく保証が出来なくてすまない。
人集りが落ち着くと、謝憐は極楽坊へ足を運ぶ。
愛してるの日で、とても道観が賑わったことを愛する伴侶に伝えようと思ったのだ。
そこでふと、いつも花城に大切だと好きだと伝えてはいるが、愛してると中々口に出していない気がすることに気づいた。
夫婦円満のため、こう言うことはしっかりと伝えなければならないと思うが、伝え方がイマイチ分からない。
謝憐は腕を組み、どう伝えるかを思考し始めた。
まず、普段彼から愛してると言われる時を思い出して、同じように言ってみようと思うが、どうだろう。
美味しいものをニ人で食べた時、綺麗な景色を二人で見た時、はしゃいで笑っている時、花城は大抵、可愛い、好き、大好きと屈託なく口に出す。でも、彼も愛してるとはあまり言わない・・・
「三郎が愛してると言ってくれたとき・・・」
花城の低く甘い声で愛を囁いた瞬間を思い出した瞬間、謝憐は腰にビリリッと電気が走る様な感覚を覚える。
そうだ。彼が愛してると囁くときは決まって、身体の一番奥に彼を迎え入れるときだ。
愛し尽くされたどろどろの状態で、奥の奥に彼を招き入れるとき、謝憐はしたなく彼を求めていて、言葉を返すことなど出来るわけもない。
謝憐は真っ赤になった顔を手で覆うと、考える。
今晩は愛してると返せるだろか?練習をしなければ、前途は多難そうだ・・・
前から歩いて来る美しい最愛の人を見ながら、謝憐は声に出さず愛してると呟いてみた。
「哥哥、どうかした?」
「あ、えっと、三郎。今日は何の日か知ってる?」
謝憐の言葉に少し目を見開くと、花城はクスリと口角を上げた。
「三郎に教えてよ、哥哥」